「文藝」2015年秋号・書評 「悪」と名指すもの/名指されるものたちすらも転倒する、 異形の小説。『悪声』いしいしんじ 【評者】水無田気流 『悪声』いしいしんじ著(文藝春秋)『悪声』いしいしんじ著【評者】水無田気流廃寺のコケに置かれていた「なにか」。赤ん坊のような姿だが、あきらかに人間とは異なる物を見、聴くことができる。いや、聴覚や視覚といった感覚の間の垣根が低く、混在した独自の感性を持っていると言ったほうがいいだろう。とりわけ特異なの 2015.09.30