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会場での受賞スピーチを速報! 日本人初の快挙! 王谷晶『ババヤガの夜』が、世界最高峰のミステリー文学賞・ダガー賞〈翻訳部門〉受賞!
河出書房新社
2025.07.04
日本時間7月4日(金)早朝、英国推理作家協会は、2025年のダガー賞〈翻訳部門〉の受賞作として、王谷晶『ババヤガの夜』英訳版(The Night of Baba Yaga)を発表しました。
王谷さんの受賞は日本人として史上初、アジアの作家としても史上2人目の快挙です。
ダガー賞は1955年に創設された、英国推理作家協会(CWA)が主催する、ミステリー小説・犯罪小説に贈られる権威ある文学賞。その中のひとつである翻訳部門(Dagger for Crime Fiction in Translation)は、英語以外の言語で書かれ、英国で出版された、英語翻訳作品に対して授与される賞です。
国境を越えた物語の力と翻訳者の卓越した手腕を讃えるもので、これまでにフレデリック・ヴァルガス(『死者を起こせ』)、ピエール・ルメートル(『その女、アレックス』)など、世界中から選び抜かれた作家の作品が受賞してきました。
これまでに日本の作品では
2016年:横山秀夫『64(ロクヨン)』(訳:Jonathan Lloyd-Davies)
2019年:東野圭吾『新参者』(訳:Giles Murray)
2022年:伊坂幸太郎『マリアビートル』(訳:Sam Malissa)
と、国内でも大ベストセラーの3作がノミネートされましたが、いずれも受賞には至りませんでした。
『ババヤガの夜』の翻訳を手掛けたのはサム・ベット、出版社はFaber & Faber(2024年9月刊)。
サム・ベットは三島由紀夫『スタア』、太宰治『道化の華』『乞食学生』、デビッド・ボイドとの共訳で川上未映子『夏物語』、『ヘヴン』(国際ブッカー賞候補)、『すべて真夜中の恋人たち』(全米批評家協会賞候補)など、数々の日本の作品を英語圏に送り出しています。
『ババヤガの夜』あらすじ
暴力を唯一の趣味とする新道依子は、関東有数規模の暴力団・内樹會会長の一人娘の護衛を任される。二度読み必至、血と暴力の傑作シスター・バイオレンスアクション
著者:王谷晶
仕様:文庫判/並製/208ページ
税込定価:748円(本体価格680円)
ISBN:9784309419657
装画:寺田克也
解説:深町秋生
出版社:河出書房新社
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309419657/
※電子書籍も発売中です。詳細はリンク先、各電子書籍ストアでご確認ください。
「ダガー賞」授賞式での王谷晶さんスピーチ全文
まずは審査員の皆さん、この国で私の本を出版してくださったFaber&Faber、アメリカで最初の英語版を出してくれたSoho Press、タトル・モリ エイジェンシー、印刷製本、流通、販売してくださった皆さん、そしてこの本を手に取って大切な時間を使ってくれた読者の皆さんに大きな感謝を捧げます。
今は、とにかく驚いています。完全に混乱しています。「モンティ・パイソン」のスケッチに出ている気分です。昨夜は「フォルティ・タワーズ」みたいな素敵なホテルに泊まりましたし。
何より感謝したいのは、翻訳のサム・ベットさんです。この本は日本のローカルな要素がたくさんあります。サムさんはそういった作品の細やかな部分をひとつひとつ大切にしてくれて、そのうえで素晴らしい英訳を作り上げてくれました。本当にありがとうございます。
私はミステリ専門の作家ではありません。様々な種類の作品を書きます。日本では作品と作家は細かくジャンル分けされているので、私は曖昧な作家と思われています。曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています。この作品の主人公たちも、はっきりとラベリングできない関係と人生を手に入れます。これは何よりも私が読みたかった要素です。
同時にこれはバイオレンス満載の物語でもあります。ここにお集まりの皆さんは私と同じく血や殺人や犯罪や、復讐や暴力が大好きな方々だと思います。もちろんフィクションの。私はバイオレンスフィクションの愛好家ほど、よりさらに現実世界の平和を願い行動しなければいけないと思っています。リアルの暴力が溢れている世界では、フィクションの暴力は生きていけません。歴史が物語っています。これからも首無し死体やパーティでの毒殺を楽しむためにも、今回頂いた栄誉を、世界の平和のために少しでも役立てたいと思います。Thank you.
2025年7月3日夜(ロンドン時間)
・『ババヤガの夜』海外でのこれまでの受賞・選出
クライム・フェスト「スペックセイバーズ新人小説賞」受賞(イギリス、2025年)
クライム・フィクション・ラバー「最優秀翻訳賞」(編集者選)受賞(イギリス、2024年)
デイリー・テレグラフ「スリラー・オブ・ザ・イヤー」選出(イギリス、2024年)
ロサンゼルス・タイムズ「この夏読むべきミステリー5冊」選出(アメリカ、2024年)
・海外・日本のレビューまとめ
海外メディアのレビュー
「めちゃくちゃブッ飛んでて最高に血まみれ、これはヤバかった!『キル・ビル』とか『ジョン・ウィック』っぽい雰囲気の本を探してるなら、もうこれ一択」――@thespookybookclub
「怒り、ユーモア、スリル満載」――The Times紙
「激しい暴力と素晴らしい優しさが交互に訪れる」―― The Guardian紙
「女の力を描いた、シャープでストイックな物語」―― Los Angeles Times紙
「手に汗握る、壊れないスリラー」―― Tokyo Weekender
「優しくも怒りに満ちたこの犯罪サーガは、オウタニの次作を待ち望まずにいられない」―― Publishers Weekly
日本の著名人レビュー
「どんどこ血が脈打ってくる。」――北上次郎(「本の雑誌」2021年1月号)
「まず、この世界を壊せ。話はそこからだ、と作者は言う。」――杉江松恋
「シスターフッド文学をあらゆる意味で刷新するシスターバイオレンスアクション!」――鴻巣友季子
「もう一気に読了して最後はナルホド! と唸った。」――大槻ケンヂ
「友情でも愛情でも性愛でもない、ただ深いところで結ばれたこの関係に、名前など付けられない。」――宇垣美里