今最も社会が必要とする気鋭の批評家・水上文による、初の批評×エッセイ集『たったひとり、私だけの部屋で』の刊行を記念して、「クィア/フェミニズムと共に文学を体験するためのブックリスト」フェアを開催いたします。

2026年9月18日
河出書房新社より発売!
『たったひとり、私だけの部屋で
―クィア/フェミニズムと共に文学を体験する』
水上 文
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▷水上文さんコメント
本書「はじめに」より
どうして私は「このよう」なのだろう? 女性であることも非異性愛者であることも、紛れもなく「私」を構成する大きな要素で、それがなければまるで別の人間だったに違いないけれど、でもそれってどういうことなのだろう? 女性であるとは、いったいなんだろう。異性愛を原則とするこの社会とは、性とはなんなのだろう?
そんな風に考えるとき、小説を読むことはいつも私と共にあった。
フェア開催店舗では、水上文さんによる選書ラインナップを、各書籍への選書コメントPOPとともにご覧いただけます。新刊『たったひとり、私だけの部屋で』とともに、本テーマにおける作品群をぜひ店頭にてお楽しみください。
「クィア/フェミニズムと共に文学を体験するためのブックリスト」フェア

松浦理英子
河出文庫
この本がなければ人生は全く違ったものになっていたかもしれない。そういう一冊を、読書が好きな人はきっと持っている。何かを読むたびに常に世界が一変するわけではないけれど、かつて一変した時の鮮烈さに再び出会えることを期待して、様々な本をその後も読み続けるようになるのだ。これは私にとって、そんな一冊である。
宇佐見りん
河出文庫
小説が好きでも、現代文学はあまり読まない、という人は多い。これは、そういう人に私が手渡したいといつも思う一冊だ。あなたの愛した文学は今なお確かに息づいていると、現代の若い作家にもこんなにすごい人がいるのだと、そう言いたくてたまらなくなる。
金井美恵子
講談社文芸文庫
すべての読書家は、金井美恵子の小説がいかに優れているかを知るべく鍛錬を積んでいるのだ。と、そんな風に言いたくなるほどに、「愛の生活」を初めて読んだ時の私は衝撃を受け、そして金井美恵子作品に出会えた幸運に感謝した。
高瀬隼子
講談社文庫
常に正しくいられるわけではない、「弱さ」に適切に配慮できるわけではない、むしろ必死に生き延びて努力すればするほど、割りを食っているように感じてしまう――そんな澱んだ沼のような感情を持つすべての人のための一冊。
トーリ・ピーターズ
吉田育未/訳
河出書房新社
ポリコレはつまらないと賢しげに言う人の横っ面を、この本でひっぱたきたい。差別によって語り口が狭められる昨今で、この小説は複雑で豊かなトランスの物語を語ることを恐れておらず、抜群に面白いのだ。お前はこれを読んだのか? と、あらゆる人の首根っこを掴んで回りたくなる一冊。
盛可以
河村昌子/訳
河出書房新社
生殖を管理され、ままならない世界でそれでも生き抜いた中国の女たち、生々しく力強い世代をまたぐその軌跡。描き出された歴史(her-story)を、どうか受け取ってほしい。
林奕含
泉京鹿/訳
白水Uブックス
性暴力の被害者がなぜ自分を責めてしまうのか、それを詳らかに描く一冊。この本を読んでしまったら、もう読む前の世界には戻れない。この本がもたらす衝撃には、どんな言葉も追いつかない。雄弁さそれ自体もまた暴力なのだから。
オクテイヴィア・E・バトラー
藤井光/訳
河出書房新社
生殖中心主義の暴力を直視せよ。植民地主義や性差別と分かちがたく結びついたその姿を見定めることが難しいのなら、この本を読めば良い。
ショーン・フェイ
高井ゆと里/訳 清水晶子/解説
明石書店
トランスジェンダーの人々を「問題」とする語り口は、トランスの人々が現に直面している困難――貧困、メンタルヘルス、性暴力、就労や教育における制度的排除など――を覆い隠す。だから問題の設定の仕方そのものを変えなければならない。本書が行うのはそれであり、目指されるのはあらゆる人の解放にほかならないのだ。
西加奈子ほか
文藝春秋
私の身体は私のもの――このごく当たり前のことを訴えるスローガンが、今なお叫ばれなければならないのはなぜなのか。本書と共に考えてほしい。
竹村和子
岩波書店
フェミニズム批評の射程はこんなにも広い――竹村和子の著作が教えてくれたその拡がりは紛れもなく解放で、私の世界は竹村和子によって革命された。物事の捉え方が根本から変わったのだ。以来私は、それを具体的に生きるための術を探し続けている。
瀬戸夏子
河出書房新社
とある男性に、女には批評はできない、と面と向かって言われたことがある。ありったけの反発とそれでも湧き上がる懐疑を抱えて鬱々としていた頃、私は瀬戸夏子の文章に出会い、おかげでようやく、長く続いた袋小路を抜け出した。今なら言える。お前は瀬戸夏子を読んだことがない、いや読めないだけだろうと。
読んでしゃべって社会が見えた
高橋源一郎/斎藤美奈子
河出新書
文学論に類する本への私の不満はいつも、そのほとんどが評価の確立した過去の名作ばかりを扱っていることだ。権威に頼るな、安住するなと言いたくなる。その点、この本は希代の読み手がまさに時代と並走しつつ語るものであって、現代日本文学の見取り図となる一冊である。批評とはこういうものを言うのだ。
もう十年以上前、彼がこの本で彗星のように登場した時の衝撃を、私は今も覚えている。哲学には明るくないにもかかわらず、当時の私は文体と論理に魅了されて繰り返し読み、文庫本が出た時にはすぐさま買って持ち歩いた。クィアな批評が存在できることを、世界を別の仕方でまなざす仕方を教えてくれた、かけがえのない一冊。
文学は根本的に暴力だと思う。対象を言葉に還元し、言葉からあふれるものを切り捨てすべて手中に収めてしまうから。この本はそんな、文学における暴力と美を凝縮して体現するかのようだった。文学を愛する人ならきっと、どうしようもなく恋をせずにはいられない一冊。
開催店舗は、随時更新していきます。お近くにお越しの際は、是非お立ち寄りください。