ためし読み - 芸術
日本最古の演劇プロデュースマニュアルが、岡田利規のポップな現代語訳で時を越えて覚醒――話題騒然の「三道」ためし読みを無料公開!
岡田 利規
2026.02.24
革命児・世阿弥、600年来の“最高機密文書“とは――?
〈あの岡田利規が、世阿弥の「三道」を現代語訳したらしい…!〉
今、演劇関係者をざわつかせている、岡田利規さんによる新訳『現代語訳 風姿花伝・三道』(税込定価2,750円)。
発売を記念し、岡田訳「三道」から、末文を特別にためし読み公開!
「『三道』を読めば、能は作れます。」
と岡田さんが語る、能の作り方を指南する実用的ハウツー本の世界を、ぜひお楽しみください!
岡田 利規 訳『三道』
「三大キャラクター類型(老人· 女性· 武士)が主人公の能のつくり方」章より一部抜粋
能の良し悪しは演者の主観で判断するものではない。能は都会であろうが田舎であろうが、地元周辺であろうが遠くの土地であろうが、とにかく上演され、その観客からの賞賛を勝ち得てなんぼ。良し悪しは世間が決めるもの。世間が名声を与えているならば、それは良し。そうでないならば悪し。つまり、誰の目にも明らかなものだ。話は変わるが、能のスタイルは時代につれてオールドスクールだのコンテンポラリーだのと移ろいゆくものとされているようだ。しかし、これは昔からずっとそうなのだが、天下に轟くほどの特別な名声を獲得した達人のスタイルは、そのいずれもが幽玄性の備わっているものだった。昔の人で言えば田楽(でんがく)の一忠(いっちゅう)。もう少し最近の人としてはわが観世座の先達・観阿弥、あるいは日吉座の犬王など。これらのアーティストたちには、そのパフォーマンスの本質に幽玄性があった。そして皆、三体いずれのカテゴリーもみごとに演じて見せた。これら達人たちの他にも武士ものや砕動風鬼を魅力的に演じて一時的に名声をほしいままにするパフォーマーたちはいたけれど、その名声は永続性を持ち得なかった。つまり、真の幽玄性をその本質に備えているパフォーマンスこそ時代を超えて輝きを放ち続ける至高の芸なのだというふうに思われてくるのである。
したがって、能を書く際には、幽玄性の〈種〉をそこに胚胎(はいたい)させることに何より心を砕くこと。そして、大事なことなので繰り返したい。時代のありようは昔と今で大きく様変わりしている。パフォーマーごとに何を得意とするかもそれぞれだ。それでも、最高レベルの不朽の名声を世の中から賦与されたパフォーマーがどれも、幽玄性のすぐれた体現者であること。これには往年の名人とされている人々を見ても現在のシーンを見渡してみてもエビデンスが認められる。都市部からも田舎からも一様に評価の高いアーティストたちの、その名声の拠り所が幽玄性に他ならないことは論を俟(ま)たない。
さて、ここまで、近年の経験を基に重ねた思索の成果を書き著した次第。ここに記したような境地に達したわたしの、すなわち応永年間に入って以降の作品群は、きっと後世にあっても色褪せることなく遺っていることだろうと自負している。本書の内容をよく咀嚼するように。
以上。本書は、我が息子元能(もとよし)に宛てて記した秘伝である。
応永三十[一四二三]年二月六日 世阿弥(花押)
●新刊情報

書名:現代語訳 風姿花伝・三道
著者:世阿弥 岡田利規訳
仕様:四六判変形/上製/176ページ
発売⽇:2026年2月24日
税込定価:2,750円(本体2,500円)
ISBN:978-4-309-03252-8
装丁:大倉真一郎
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309032528/
※電子書籍は3月以降に発売いたします。詳細は各電子書籍ストアでご確認ください。













