ためし読み - 育児
「いくら叱っても同じことをする」「翌日にはケロッとしている」のは、しつけが不十分だからではない! 児童精神科医・佐々木正美が教える『子どもの心の育てかた』
佐々木正美
2026.03.12

『子どもの心の育てかた』
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「叱られてもすぐに忘れる」
「失敗しても同じことを繰り返す」
これは、幼児期の子どもの大きな長所です。

3歳の終わりごろ、トイレトレーニングもだいたい終わった、というころから、子どもたちは非常に活発に活動するようになります。生き生きとした好奇心にあふれた探索活動を開始し、親としてはケガをしないか、迷子にならないかと心配でしかたがありませんが、いっぽうでたのもしくも感じることができる時期といえるでしょう。乳児期の「周囲への絶対的な依存時期」、そして自律への芽が出る時期を経て、はじめてこの活発な時期をむかえることができます。自発性をもった豊かな感性を秘めた子になるか、なにかしら罪悪感のようなものを抱いた子になるかは、だいたいこの時期がひとつの分岐点となります。十分な依存経験を経て、その後自律心が育ってきた子どもは、3歳の終わりからは、「自発性」を思う存分発揮できるステップへと進んでいくことができます。
生まれてすぐから1歳〜1歳半ぐらいに、周囲の人間に対する基本的信頼感を身につけ、それにつづく3歳すぎまでの時期に自律心を身につけるということですが、ときに、自律心を身につけるべき時期に、自分自身に対する「恥」や「疑惑」の感覚が心のなかに根ざしてしまう場合もあります。自分の行為がなにか恥ずかしいことだと思ったり、自分には価値がないのではという疑いの気持ちです。これ以前の時期から、子どもに早くから「自律心」や「主体性」を身につけさせようとして、厳しくしつけをしたり、泣いてもあえて抱かなかったり、ということをするのは間違いです。むしろ、これはまったく逆の効果をもたらすことを知っておいてください。子どもの発達に「飛び級」はありません。どんな子どもも必要なステップを飛ばして健康、健全に育っていくことはできないのです。
子どもの求めになんでも応じる、つまり「泣いたら飛んでいって抱く」といったことをできるかぎり繰り返すことで子どもは自他に対して「絶対的な信頼感」を知ります。それがなければ「自律心」は育ちません。そして「自律」がなければ自発性、主体性も生まれないのです。
活発に活動を始めたなら、それを無理に制限しないでおいてください。行動範囲は公園、友だちの家、少し離れた隣町とどんどん拡がりますが、そうなっていかなければおかしいのです。「疲れを知らない子どものように」という歌詞がありますが、これはまさにこの時期の子どものことです。危険がないかぎり、その活動範囲を拡げてあげてください。
ありあまるエネルギーを無駄遣いするかのように見える時期ですが、そういうものなのです。意味もなく走りだし、小高い場所があれば必ず上る、階段と見れば用もないのにやたらに駆け上る、そして駆け下りる、捨て猫は拾ってくる、知らない家のブザーまで鳴らして走って逃げる、と手のつけようがなくなっていきますが、それでいいのです。
そしてもうひとつの大きな特徴は「叱られても失敗しても、すぐそれを忘れる」という「長所」をもっていることです。これは素晴らしい長所です。「いくら叱っても同じことをする」「翌日にはケロッとしている」と嘆くことはありません。それは、その子がなによりも健康に育っている証拠なのです。
幼児期の子は身体を動かすことでものを考えています。身体を動かさないと知恵もつきません。飛び降りることで高さの概念を知り、物を投げたり持ち上げることで重さ、硬さを理解する。転んだりぶつかったりして痛さも知ります。小さな失敗の繰り返しで「とりかえしのつかない失敗」は避けられるようになるのです。
失敗や叱られたことを「忘れる力」があるから、小さい失敗を繰り返すことができます。
日常的に常に叱られつづけ、行動範囲を親に制限され、強い指示や命令を受けていると、子どもは叱られたことや失敗を忘れることができなくなってしまいます。そして萎縮して、意欲や自信のない子になっていきます。
==全編は『子どもの心の育てかた』でお読みください。==












