書評 誰もが知っている「毛」についての、誰も知らない物語――藤田貴大 著『季節を告げる毳毳(けばけば)は夜が知った毛毛毛毛(もけもけ)』 評者・太田莉菜 時たま友人と話題にあがる話で、子供の時にふと「今見えているこのリンゴの赤は私にとっては赤だけど、他の人には違う赤かもしれない、丸く甘酸っぱいこの果物は、他の人には四角く苦い他の何かかもしれない、そうなると私の生きている世界は信じていいの? 正しさってなに? 絶対ってなに?」と考えたりすることがあっ 2020.11.10