文庫 - 随筆・エッセイ

【レシピ公開!】読んで楽しい、作っておいしい!フランス人のいつもの料理90皿『パリっ子の食卓』

パリっ子の食卓 フランスのふつうの家庭料理のレシピノート
佐藤真

文庫化を記念して、レシピを2つ公開します。ぜひお読みください。

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太陽がお皿に落っこちた
ピペラード(赤ピーマン炒め)

©佐藤真

 

 南仏、スペイン、ポルトガル、ギリシア、モロッコと地中海沿岸を旅しながら、さまざまな料理を味わってもどこか共通するこの香り、このコク。どうやらオリーブ油に秘密がありそうだ。
 そのオリーブ油で赤ピーマンやトマトを炒め煮したものがピペラード。やはりスペイン国境にあるバスク地方の名物料理です。この作り方は、数年前パリ=ダカール・ラリーの最中にヘリコプターが墜落して亡くなった歌手バラヴォワンヌが「オフクロの得意料理です」とテレビで紹介していたものだ。
 大きめのフライパンにコップ半杯くらいのオリーブ油をとり、みじん切りにした玉ネギ一個を炒め、つぶしたニンニクも加える。いい香りが立ったら、大きくせん切りにした赤ピーマンを七〇〇グラムは加える。好みでは緑のピーマンを混ぜてもいいけれど、肝心の甘みは赤ピーマンでないと出てこない。
 しばらく炒め続けると、しんなりして、油に赤い色素がにじみ出てくるだろう。ここでトマトを同量加える。酸味をおさえるために砂糖ひとつまみ、そして塩、コショウ。木のヘラで絶えずかき混ぜながら、三十分くらい炒めれば完成という簡単料理です。水気が飛ぶように、フタをしないのがコツといえばコツ。
 トリ肉、豚肉、玉子料理に添えれば、暑い太陽がお皿に落っこちたような鮮やかさです。
 残りを煮かえすなら、少々手を加えて変化をつけたいものです。ぼくは、グツグツと熱くなってきたら、さいの目に切ったベーコンを入れる。バイヨンヌ産の生ハムだったら、もっと本格的だろう。ベーコンや生ハムに火が通ったら、一人当たり二個、玉子をときほぐし、静かに流し入れる。半熟加減になったら、ペルシ・プラというちぢれていないパセリをきざんで散らし、皿にとり分ける。
 熱々を頬ばると、ピペラード、ベーコン、玉子の渾然とした味が口いっぱいに広がり、病みつきになりそうだ。
 ワインは、地中海でもスペイン寄りのミネルヴォワの赤はどうだろう。最近どんどん良くなってきているワインで、力強さの中に豊かな風味が隠れている。

 

 

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家族、友人が集まったので
アイオリ

©佐藤真

 

 暑くなってくると口の中によみがえる味は、アイオリ・ソース。もう十年以上も前の夏、地中海に面した小さな町の友人の実家で、何度かごちそうになったニンニク風味のマヨネーズだ。大皿に盛りつけられた野菜・肉・魚・ゆで玉子などを好き好きにとって、このソースと一緒に食べた楽しさが忘れられない。アイオリはプロヴァンス語のアイ(ニンニク)とオリ(油)からきている。
 ニンニクは大きめのを四片、二つに割って真ん中の緑色の芯をのぞき、すり鉢で丁寧にすりおろす。これに一時間ほど前に冷蔵庫から出しておいた玉子一個分の黄身を混ぜ合わせ、塩、コショウ。あとは絶えずすりこぎを回しながら、オリーブ油を少しずつ加えてすり合わせていくだけです。マヨネーズのような固さでなめらかになったら出来上がり。油の量は全部で一カップ強、これで六人分くらいだろう。すり鉢がない人は、まず別にマヨネーズを作ってから、丹念におろしたニンニクを混ぜ込む。
 大皿には何を盛りつけようか。
 野菜は、彩りを考えながら、ニンジン、セロリ、カリフラワー、莢インゲン、ジャガイモ、真っ赤なベットラヴ(ビーツ)など。ゆでるものは、歯ごたえを残すことが大切だ。カリフラワーは生でもいいが、軽くゆでたものもおいしい。肉はポトフの残りがあったら一番だし、同じようにあっさりと煮た子羊の肉もいい。魚は干ダラを一日かけて塩出ししゆでたものが南仏らしい。第一ふつうの白身の魚をゆでただけではソースに負けてしまう。干ダラがない時は、白身の魚に塩を振って一日ほど干して焼いたものを添えましょう。ビュロというバイ貝を塩ゆでにしたものもアイオリ・ソースと相性がいいから、試してほしい。
 これらを豪勢に盛り合わせて、ゆで玉子やパセリなどで飾り、アイオリと一緒に食卓の中央にドンとすえれば、大歓声! 暑い時ほどおいしい、前菜とメインをかねた完全食だ。体の中から力がわいてくる。
 ワインはあまりこだわらなくてもいいだろう。軽い飲み口のロゼなどを少し冷やし、ピシェに入れて出せばいい。

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そのほかにも、美味しいレシピがたくさん!ぜひ本書でご確認ください。

 

パリっ子の食卓 フランスのふつうの家庭料理のレシピノート佐藤真
河出文庫●2019年8月発売

読んで楽しい、作って簡単、おいしい! ポトフ、クスクス、ニース風サラダ…フランス人のいつもの料理90皿のレシピを、洒落たエッセイとイラストで紹介。どんな星付きレストランより心と食卓が豊かに!

 

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著者

佐藤真

1946年新潟県生まれ。1975年にフランス政府奨学生として二度目のパリ留学。そのまま定住し1979年にパリの日本語新聞『オヴニー』創刊に参加。現在同紙編集長。またエスパス・ジャポンで料理教室も開催。

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