単行本 - 14歳の世渡り術
友だち、学校、親……44の悩み別に全114冊を紹介。『モヤモヤしている女の子のための読書案内』まえがき公開中
堀越英美
2020.12.02
『モヤモヤしている女の子のための読書案内』
堀越英美
『女の子は本当にピンクが好きなのか』『不道徳お母さん講座』『スゴ母列伝』などで、社会における「女らしさ」「男らしさ」「母」などに関する無意識の刷り込みを徹底的に掘り下げてきた著者が、10代の女の子が日々感じるモヤモヤをすっきりさせる読書を提案! まえがきを公開します。
まえがき
マンガ、アニメ、スマホ、ゲームなど、キラキラした楽しい娯楽があふれる現代において、なんだって本なんて地味なものを読む必要があるのでしょう?
想像力を豊かにするため、感性を磨くため、表現力を高めるため、知識を増やすため。さまざまな理由を聞いたことがありますが、どれもピンときません。それならマンガでもいいのでは?と思ってしまいます。
私が考える本の良さ、それは「すごくたくさんある」ということです。
なんだその頭の悪そうな理由は、と思われるでしょうか。Google 社の推定によれば、世界に存在する本の数は1億2986万4880点(2010年8月時点)にものぼります。1日1冊ずつ読んでも35万年以上かかる計算です。これほど数があれば、「こんなことを考えているのは自分だけかも」という思いを分かちあえる本、ぼやけていた視界が開けるような未知の価値観を教えてくれる本だって、きっとどこかにはあるはずなのです。
学校で堂々と楽しめるという点も、他のメディアにはない良さです。ひとりぼっちのときも、休み時間に本を読んでいれば恰好がつきます。
逆に言えば、現実の生活が充実している10代なら、無理に本を読む必要はないのかもしれません。太宰治も、「本を読まないということは、その人が孤独でないという証拠である」と書いているくらいです。
けれど、もし人に打ち明けづらいモヤモヤを抱えているなら、周囲に知られることなく多様な価値観に触れられる本は、心の整理整頓に役立つでしょう。
一方、本というメディアの厄介さは、その関わりが非常に個人的すぎるという点にあります。星の数ほどもある中から選んだ、誰かにとってたった一つの大切な本は、ほかの誰かにとってはただの紙の束にすぎない、ということは珍しくありません。動画は再生数を見れば面白さをだいたい予測できますが、一億人が読んだ古典だからといって、その本が自分にとって面白いかどうかはわかりません。アニメやマンガのように、パッと見で自分の好みかどうかを判別するのも難しい。今の自分にちょうどぴったり合った本を探すのは至難の業です。
ブックガイドはどうでしょうか。大人がおすすめする本は、若い頃のその人にとっては運命の本であったとしても、現代の10代の心に触れるとは限りません。学校で配付される課題図書リストも、教育者の立場から怪しい本を推薦するわけにはいきませんから、がんばる若者が成長する道徳的な物語や偉人の伝記などがメインになりがちです。もちろんそれらを楽しめればそれでいいのですが、心がダークサイドに堕ちているときには、さわやかな物語にかえって落ち込んでしまうこともあるでしょう。
ことほどさように、10代に本を紹介することは難しい。我が家にも中学生の長女がいますが、ただ私が好きな本を薦めても、パソコンを眺めたまま「フーン」で終わりです。しかし学校や人間関係のモヤモヤを聞かされたとき、モヤモヤを言語化するヒントになりそうな本を紹介すると、思いのほか食いつきがよいのです。思春期のモヤモヤなら、中年にだっていくらか覚えがある。というわけで、本書は思春期女子のモヤモヤ別に、本を探せるようにしました。
選書にあたっては、現役女子中学生の意見を反映して、なるべく新しい本、笑える本を優先しました。本はとにかくいろいろある、ということも知ってほしくて、物語に偏らないようにしています。多少は下ネタもあるかもしれません(ごめんなさい)。いい子のふりをすることにうんざりしている女の子が手に取ってくれることを願っています。