注目の気鋭作家が描いた怒りの幽霊ヒーロー小説 『死んでいる私と、私みたいな人たちの声』大前粟生
夏木志朋
私は、誰かを救うために主人公が奔走する物語が大好きだ。 もっとも多く見られるのは、主人公が他者を救い、それにより自己の回復をも遂げるストーリーだろうか。この場合の「他者」を「自分」に置き換えることも可能で、自分自身を救うために駆け抜ける主人公の姿に、読み手である「誰か」が救われるといった、代行の構
2022.08.12「大前粟生」の検索結果 : 7件
夏木志朋
私は、誰かを救うために主人公が奔走する物語が大好きだ。 もっとも多く見られるのは、主人公が他者を救い、それにより自己の回復をも遂げるストーリーだろうか。この場合の「他者」を「自分」に置き換えることも可能で、自分自身を救うために駆け抜ける主人公の姿に、読み手である「誰か」が救われるといった、代行の構
2022.08.12評者・太田啓子
「笑いに潜む暴力性」に真摯に対峙する――大前粟生著『おもろい以外いらんねん』太田啓子 本作の主要な登場人物は滝場、ユウキと語り手の俺こと咲太。同級生だった3人の高校時代から始まる。それから10年経ち、お笑い養成所を卒業した滝場とユウキが結成したお笑いコンビ「馬場リッチバルコニー」が解散するまでを描い
2021.02.05大前粟生
2021年1月27日、大前粟生さんの最新中篇『おもろい以外いらんねん』単行本が刊行されます。幼馴染の咲太と滝場、転校生のユウキという仲良し3人組が、笑いと傷をめぐって葛藤する10年間の物語。雑誌「文藝」2020年冬季号に掲載されるやいなや、「おもろい以外いらんねん、と何度でも声にしたい」
2021.01.15編集部
2020年3月の刊行以来、数多くの反響をいただき、5月現在3刷が決まった大前粟生さんの小説集『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』。書評とインタビューをまとめました。随時更新いたします。◆新聞、雑誌等で紹介多数!気鋭の新人による、「どうしても鈍くなれない若者たちの物語」を集めた繊細な作品集。家の中でク
2020.05.28評者・児玉雨子
帯やSNS等で「ジェンダー文学」と紹介された表題作をふくめ四編が収録された本書だが、その全体を鳥瞰すれば、境界、あるいはアイデンティティも主題のひとつだろう。ジェンダーは自己同一性に抱えられながら、同時にそれを深く穿つ要素でもあるのだが。 ことばは、わたしとあなたを分かち、互いが別個体なのだと再認
2020.05.12大前粟生
「全身全霊で女性差別に傷つく男の子の話を書いてください」 去年のバレンタインに『文藝』の編集者さんとの打ち合わせでそういわれた。私がそれまで書いてきた小説はいわゆる「奇想」系と呼んで差し支えのないもので、妹の右目からビームが出て止まらない話だったり、人間が西部劇でころころ転がっているあの草のかたまり
2020.02.14評者・大前粟生
「初めてのひとりで暮らした場所に、もう一度、行きたい」登場人物の小翠(シアオツイ)がいう。語り手の〈私〉も仕事を休んで小翠と共にいくことにするのだけれど、旅程を調べているとき、小翠が暮らしていた一帯の地図が見えなくなっていることに気づく。故郷ではなく、居た場所の情報が消えている。『居た場所』の表題作
2019.05.08