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現役の高校教諭が忙しい現代人のために説く、経済学の基礎の基礎――『中高の教科書でわかる経済学 ミクロ篇』『中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇』

 この本は、現役の高校教諭である著者が、「教科書だけではわからない、でも教科書を理解できれば経済学も理解できる」と、難しい言葉を使わずに現象と理論を引用しながら、「なぜ経済学で、そうなるか」を理解できるようじっくり解説した1冊です。

 ミクロ篇の「はじめに」から抜粋します。

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 この本は、中学校「公民科」、高校の「現代社会・政治経済」の教科書・資料集に登場する経済用語を用いて、ミクロ経済学・マクロ経済学の理論を理解し、そこから世の中の経済現象を理解してもらうための本です。経済学という手段を使って現実を理解するための本といってもよいでしょう。

 世の中にある経済関連の本は、大別すると(1)TPPとは何か、金融政策・財政政策とは何か、というような「経済現象を解説する本」と、ミクロ・マクロなどの経済学が簡単に学べる(2)「経済学を学ぶ人のための入門書」とに分かれています。

 しかし、(1)だけでは、たとえばアベノミクスの金融政策とは「何か」がわかっても、アベノミクスの金融政策を「なぜ採用するのか」がわかりません。時事用語がわかり、表面的な知識は得られるものの、「なぜ」それが生じるのかわからず、体系的な知識は得られません。

 一方、(2)は、大学で経済学を勉強しよう、あるいは公務員試験などのために経済学を学ぶ必要があるという人向けの本で、一般の人が手にする内容のものではありません。「マクロ経済学」「ミクロ経済学」の棚にある本、つまり大学の教科書レベルになれば、「パレート最適」、「厚生経済学の定理」といった聞き慣れない用語や難しい数式が並び、ここまでくると「経済現象がなぜ生じるか」を知りたいだけの人にとっては、ハードルが高すぎます。

 これを理解するには相当な勉強時間が必要で、忙しいビジネスマンにはそんな暇はありません。

 そこで、この本では「経済現象」と「経済理論」を結び付け、「なぜそうなるか」を最小限の時間でわかるように解説します。使用するのは、中学・高校で使われている教科書・資料集に登場する経済用語です。

 中高の教科書は、大学で経済学を教える経済学者が書いたものです。それらの記述には、経済学の基礎・基本部分の用語が使われています。つまり、中・高の教科書をしっかり理解すれば、世の中の経済現象は、誤解をすることなく、正確にわかるはずです。

 ところが、実際にはそうなっていません。たとえば、「貿易黒字は得、赤字は損」という世の中によくあるトンデモ論がいまだに見られます。
 
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 著者は、現役の高校教諭。既刊『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』は、自費出版本を改訂し山形浩生氏や宮崎哲弥氏が推薦して弊社から刊行、大きな話題となり、5万部を超えるベストセラーになりました。満を持して書き下ろしたのが、この『中高の教科書でわかる経済学』です。

 担当編集者自身は文系で、経済学は、さっぱり苦手です。はっきり言って、経済学なんて社会に出て使う必要ある? と思っていました。

 ところが意に反してまずは本書の冒頭で大きく感嘆しました。毎日の、日々の営み、活動を経済学的に見てみると、どうなるか。菅原さんは人生も「何を選び何を選んでいないか」という「選択(トレード・オフ)」の繰り返しだと説明します。つまり、日常的に経済学の概念があることで、社会や自分の見方にも影響がある、と教えてくれました。そしてそれは、複雑化する社会のなかで生きるために必要な、たくさんの物差しの一つ、武器となることも教えてくれました。

 そして次に驚いたこと。それは今の中学生、高校生の教科書は想像していた以上に難しかったということです。正直「こんな難しいことまで習うのか」と、びっくりの連続でした。中高で習う経済関連の学習内容は、歴史分野(日本史、世界史)に比べると、はっきり言って大学入試にはあまり大きな比重を置かれないかもしれません。それなのに、大学では経済学部があり、社会に出たら経済理論、社会現象としての「経済学」は必需品です。
 
 そこで、書籍の世界でも「中学英語をしっかり学べば、海外でも充分OK」といったコンセプトの本が社会人向けにあるように、この本では「中学、高校の教科書をしっかり学べば、現実社会の経済現象が理解できるようになる」本を目指しました。もちろん、中高の教科書を学校だけで、現役の先生でも教えるのが難しいのが、現実です。教科書だけではわからないことが、たくさんある。そこを、この本を「虎の巻」として理解してもらえるように――そんな願いを込めて編集しました。

 今、人気がありベストセラーになっているような、大学生向けのお手頃な本のように1項目1見開き1テーマで解説された本ではありません。じっくり、何度も読み返すことでよく理解できる仕組みは、既刊同様で、骨太です。

 時間はかかるように見えても結局は一生ぶれない経済学の物差しとなるような1冊、経済学の基礎の基礎、を理解するための1冊となっています。

 ミクロ篇、マクロ篇と併せて、皆様の理解を深める1冊となりますように。

(編集部YT)

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