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14キロ痩せに成功した本から、ジャンプコミックスまで 本読み河出スタッフが選んだ、2020年の本(他社本もあるよ!)

2020年は池澤夏樹=個人編集 日本文学全集が完結した年でもありました。

大変な年でした、2020年。

 
 不要不急の代表のような出版業を商う河出書房新社、そんな今年も平時には及ばないものの、近い数の書籍を刊行することができました。なんと600点弱…! 受け止めてくださった読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。
 さて、普段は自社刊行物普及に努める我々が、忖度ナシに心から語りたい本をオススメする恒例企画「本読み河出スタッフが選んだ今年の本(他社本もあるよ!)」2020年版を今年もお届けします。

 この記事をまとめていて、今年は社内で「最近読んだ本」の話をすることが、極端に減ったことに、今更ながら気が付きました。リモートワーク導入で、業務の話は基本チャット、会ってもなるべく手早く打ち合わせ。去年までも、同僚とは本の話ばかりしているつもりだったけど(だからその時間はすっかり仕事しているつもりだったけど)、実はいろんな雑談をしていて、意外な着地点に辿り着いて、おかげでたくさんの、自分では手に取らなかった本との出会いをもらっていたんだと気づかされました。この記事が皆さんの「雑談」に当たるものになれば幸いです。

 さて本題。宇多田ヒカルさんもおススメされていた、とびきり元気になるこちらの本からどうぞ!

リン・エンライト 小澤身和子訳
『これからのヴァギナの話をしよう』
(河出書房新社)

訳者小澤身和子さんのあとがきにも書かれているように、「もっと早く出会いたかった本」今年のナンバーワンでした。
女性の身体に対する無関心は社会だけでなく女性自身さえもが陥ってしまっていますが、そこにクリティカルな疑問が投げかけられます。”ヴァギナ目線”から見つめる世の中は新鮮でもあり、非常に広く深い視座で繰り出される指摘にハッとさせられてばかりでした。教育によって”本来不要である悩み”や”弱められるべきではない自尊心”が守られることにも改めて気付かされます。老若男女、ジェンダーを問わず手にとって欲しい一冊だと思いました。
ブックデザインも魅力的です。

杉山(経営戦略部)

 

國分功一郎/ 熊谷晋一郎
<責任>の生成ー中動態と当事者研究

「ここは重要!」の線を引く箇所が多すぎて、432ページのほとんどに折り目をつけてしまいました。
まさに2020年を代表する一冊ではないかと思います。

 

劉慈欣『三体Ⅱ 黒暗森林

「めちゃくちゃ面白い小説を読んだな!」という気持ちをがっつり味わえて最高でした。
完全に分厚いのに一気読みしてしまうことが分かっていたので、
コンディションを整え、ホテルステイして読みました。

 

藤本たつき『チェンソーマン

「ありがとう」と伝えたいですね……。

おでん食べたい

 

柳澤健『2016年の週刊文春』(光文社)

犯罪でもないスキャンダルを報じるのはアウトでしょと思ってしまうので、本書で「読まれるのはとにかく芸能スキャンダル」と繰り返されるたび噎まくり。なのに、悔しい。夢中で一気読み。
考えはともかく、長年の蓄積が読まれるコンテンツを生む、という事実を確かめたことは出版界の希望で、その経緯を書き留めたのはすごい。具体的な数字もバンバン出てきて、同業者は参考書にさえできるでしょう。
膨大なファクトをほぼ淡々と積み重ねていたのもよかった。だから考え方が違っても面白く読み通せたのかも。

宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)

宇佐見りんのスキのなさ、ヤバい。
テーマ、文脈、言葉、そして選ばれるモチーフひとつひとつ、全部綿密に考え抜かれ、設計していて濃密なのに、一瞬も止まらず読んでしまうこのスピード感。
小説を読む楽しさがこれでもかと詰まっている。
パンチライン続出で全文書き抜きたくなるし、周囲に読み聞かせしたくなって大変な本でした。

nmkt

 

文藝別冊 ザ・フー(河出書房新社)

ビートルズやストーンズと並ぶUKロックの重鎮でありながら、日本でイマイチな人気のザ・フー。その魅力をファン目線で伝えた思い入れたっぷりの本。ザ・フーだけでなく、ソロ作品のガイドも充実。

 

和久井光司責任編集
フランク・ザッパ攻略ガイド
(河出書房新社)

20世紀最大の天才ロック・アーティスト、フランク・ザッパの編年体によるディスクガイド。あの膨大なアルバム群のどれから聴いたらいいかわからないロック・ファンへのザッパ入門書。

細田昌志『沢村忠に真空を飛ばせた男(新潮社)

オールドファンには懐かしい「キックの鬼」沢村忠を世に出した興行師・野口修の評伝。あの五木ひろしのマネジメントも手掛け、今に連なる格闘技興行の基盤を作った毀誉褒貶に満ちた物語。

十文字小弥太

 
吾峠呼世晴鬼滅の刃1-18巻(集英社) 
 
なぜこれだけ売れているのか確かめたく1-18巻までを大人買い。全集中で1日で読み切る。家族、愛、友情、勇気、心に刺さるキーワードがふんだんに盛り込まれ、今どきの勧善懲悪物語。見事にハマる。残り19-23巻は正月休みに読破予定。
 
 
レイ・クロック成功はごみ箱の中に』(プレジデント社)
 
52歳で起業し、マクドナルドを全米チェーンに発展させたレイ・クロックの自伝。
ファストフードのハンバーガーチェーンを構想したのが52歳の時。いくつになっても成功を目指し起業をためらわないチャレンジ精神に感動。
 
 
デイヴ・アスプリー
(ダイヤモンド社)
 
売れているので買ってみた。読んだら試したくなり6月から実践開始。
現在14キロ減。恐るべしバターコーヒー。
 
営業部S.K
 
須藤佑実夢の端々』上・下(祥伝社)
 
上巻オビの「結婚することになっちゃったけど私のこと見捨てないで」を見たときは、どんなズルイ女だ!とワクワクで読み始めましたが、最後には「き、きよちゃんー!(号泣)」となるのでした。戦後、女学生で恋人同士だった2人の心中未遂、のその70年後から物語が始まり、どんどんさかのぼっていく構成にもひきこまれます。読み返すたびに泣いてしまう!
営業部Y
 
春日武彦
(医学書院)
 
精神科の援助者のための教科書だが、むしろ「人間入門」と呼びたくなる一冊。やわらかい筆致の奥にある、人間という存在への豊かな洞察に圧倒される。それをやわらかく支える編集・造本も素敵だ。
 
原武史
(新潮社)
 
史料を大切にする政治学者は、けっして「現場」をゆるがせにしない。全国各地を丁寧に訪れ、しかもただでは済まさない。駅弁たりともないがしろにしない。知的な営みの原点を見る思いがする。
 
斎藤美奈子
(紀伊國屋書店)
 
『scripta(スクリプタ)』という季刊誌をご存じだろうか。その巻頭を15年近くにわたり飾ってきた連載が本に成った。ハードロック・アルバム(に喩えるのはいかがなものか、というのはさておき)の1曲目のスピード・チューンだけを集めた、「何が出るかな?」感の波状攻撃に目を覚まされる。
 
(編集部F)
 
 
サラ・クロッサン 最果タヒ 金原瑞人訳
(ハーパーコリンズ・ ジャパン)
 
今年いちばん心を揺さぶられた1冊。
物語として素晴らしいのはもちろんのこと、一度は刊行を断念するほど困難だったアメリカの現代詩の翻訳が、最果タヒさんの参加によって実現するという刊行までの経緯も感動的。造本も美しいので、紙版がおすすめです。
 
 
描かれるのは、様々な形の暴力にさらされる人々のこと。夫の不倫、性産業につとめる女性、沖縄など。まっすぐな言葉で、その切実さが伝わる思いがした。
大好きな1冊です。
瀧本哲史
(星海社新書)
 
本は出しただけでは売れないので、まずはどうやって読者に存在を知ってもらうかを出版社の人は頻繁に考えるのですが、その極北を見た1冊でした。内容はもちろん、企画意図とか、本の造り方とか、盛り上げ方とか、今年いちばん凄かったです。
 
 
『愛の不時着』大好き!
 

ジョゼ・サラマーゴ 雨沢泰 訳
白の闇
(河出文庫)

異常なのに強烈なリアリティが真に迫って一気読み。未知の伝染病に出会った時の人間心理には普遍性があると思いました。非常に面白い本です。

ジョン・グリシャム 著/村上春樹 訳
「グレート・ギャツビー」を追え
(中央公論新社)

稀覯本が題材、というのに惹きつけられ、軽い気持ちで読み出したら止まらなくなりました。本好きならきっと楽しめる一冊。

 

チョン・イヒョン 斎藤真理子 訳
優しい暴力の時代
(河出書房新社)

微妙で理解しがたく不安になるような小説はたいがい好きで、本書も不穏な雰囲気が素敵。ささいな出来事が描かれているのに長編的余韻が味わえます。

(*O*)

 

近藤聡乃『ニューヨークで考え中③』(亜紀書房)

30過ぎて初めて行ってドはまりして以降、年に一度、二度とお金を貯めては一人旅を続けているニューヨーク。コミック読まないのにタイトルに吸い寄せられ、ついつい買っちゃうんですよねー。ついにニューヨークもコロナ禍に突入。第3巻も目が離せない!

柚月裕子『暴虎の牙』(KADOKAWA)

「男の世界」なんて言うつもりはさらさらないんです。ヤクザや破天荒な刑事の生きざまをカッコいいなんて言うと仕事に支障をきたしそうだし…でもグッとくる。読後、痺れます。シリーズ第三弾にして最終巻。別れ難い。

角田光代訳『源氏物語』(下)(河出書房新社)

三巻目つながりで最後は「角田源氏」の下巻を……偶然じゃない? いやらしい? いえ違うんです。大学で宇治十帖のゼミを取り、準備万端この巻を心待ちに(時系列が合わないが)していたほどです。千年前に思いを馳せて一気読み。この源氏全三巻完結を待って『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』、祝☆毎日出版文化賞受賞!!

営業部S

 

ピーター・フランコパン
シルクロード全史』上下(河出書房新社)

モノのみならず、戦争、病、神をも運んだ道の壮大な歴史。とはいえ、堅苦しさはなく、中東の都市の繁栄、まさにアラビアンナイトの景色と匂いが立ち上るよう。コロナ禍での暗い雰囲気から異世界に連れ出してくれた一冊。

 

リチャード・オウヴァリー監修
地図とタイムラインで読む第2次世界大戦全史
(河出書房新社)

誤解を恐れずに言えばWWⅡは非常におもしろい。ただ、あちこちでいろいろなことが起きているので、非常にややこしい。という問題を、地図とタイムラインの連動で解消してくれる。ミリタリー系プラモデル製作の資料にもおすすめ。

 

アーネスト・ハワード・シェパード 永島憲江 訳
思いでのスケッチブック
『クマのプーさん』挿絵画家が描くヴィクトリア朝ロンドン

(国書刊行会)

『プーさん』の挿絵画家による幼少期の記憶を描いたエッセイ。ただいま子育て中につき、大人になったとき、こういうやさしい記憶を残してあげられるといいなあと思った次第。

編集部SW

 

谷川俊太郎、岡野大嗣、木下龍也
今日は誰にも愛されたかった』(ナナロク社)

どこかひっかかるタイトルに惚れました。(詩と短歌による「連詩」の中で生まれたフレーズからとられています。)
「感想戦」では、並んだ言葉に隠された戦略性を垣間見ることができます。ここまで考えて作っているのかと。すごいです。

 

グラフィック社編集部
デザインのひきだし41 特集 写真と図解でよくわかる製本大図鑑
(グラフィック社)

製本途中のような本のデザインにうっとりしてしまいます……。
「製本大図鑑」という名の通り、80種類もの製本バリエーションが写真付きで収録されています。
紙の本ならではのこだわりが詰まった一冊に、ワクワクがとまりませんでした。

(営業部S)

 

 原田マハ『たゆたえども沈まず』(幻冬舎)
 
フィンセント・ファン・ゴッホの孤独を抱きしめたくなった。白黒の頁から浮かび上がる世界は、上野で見た作品たちのごとく色鮮やかで、あの起伏した筆跡のようにみしりと心に刻まれる。気付けば彼らと共にあって、1890年のセーヌ川と2020年の隅田川が繋がりゆく感覚さえ覚える。これぞ、物語の魔法。2017年単行本の文庫化。
 
平川克美
株式会社の世界史  「病理」と「戦争」の500年
(東洋経済新報社)
 
「ヴェニスの証人」から近年の企業事例まで語られる、アカデミックかつプラグマティックな考察。たかが500年の歪さと、されど500年の憑き物を孕んだ歴史に引き込まれる。コロナ禍にあって、異様な成長を遂げる世界の株価。いま我々が立ち会っているのは、株式会社の終焉か、はたまたパラダイムシフトか。
 
熊谷晋一郎
わたしの身体はままならない
〈障害者のリアルに迫るゼミ〉特別講義』 
(河出書房新社) 
 
生講義におけるそれぞれの熱量も凄まじいが、紡がれた言葉たちが並べられ本の形になると、これほど立体的になるのかと驚いた。一見特別にも見える当事者たちの語りが、自分の経験に即して響いていく瞬間が新しい。プロジェクトの名の通り、扉を開けてくれた一冊。
 
(._.)
 
藤井太洋ワン・モア・ヌーク(新潮社)
 
東京オリンピック目前の2020年3月、突如核テロが予告される。テロを阻止すべく奮闘する科学者、警察官たちとテロリストの思惑が交錯するサスペンス。
藤井氏独特の情報量の多さと疾走感のあるストーリーは一気読み必至!
河出的には、社屋の至近距離にある新国立競技場が舞台になるという緊迫感に手に汗を握りました。
五輪が延期になった今、未読の方はぜひお手に取ってみてください。
 
 
山本貴光
(本の雑誌社)
 
本の余白への書き込み=マルジナリアをめぐる様々な考察。
出版社の中の人はマルジナリアンが多数と思われますが、他業界にいた私は書き込みをしないで普通に読む派でした。
著者の勧めに従い勇気を出して書き込んでみると…思いのほかテンションが上がり愉しくなってきます。
自分だけのオリジナル索引の作り方など、本の使い方の可能性を拡張するヒントがつまった一冊。
 
編集部事務 T・H
 
中村 高寛『ヨコハマメリー』(河出文庫)
横浜界隈の狭い世界の話かと思っていましたが開いてみるとさにあらず、著者が「メリーさん」という個人を追いかければ追いかけるほど、教科書では読めない戦後の日本の真実が浮かび上がってきます。涙なしには読めない素晴らしい本です。

ナオミ・ポロック『日本のデザイン1945-』(河出書房新社)
自社本ですが迷わず購入。これぞ日本のプロダクトデザイン集の決定版。などと大げさな理由なぞ要りません。ティッシュの箱から新幹線に至るまで身近なデザインに思わず「こんなのあったなぁ」とほっこり。ウォークマンのページは泣ける!
村川耕作
 

○植本一子個人的な三月 コロナジャーナル(自費出版)

こんなにも「いま」が書かれている!!と思ったのははじめてでした。
もやもやしていた春を一緒に走ってくれた、大事な一冊です。

 

○岸本佐知子死ぬまでに行きたい海(スイッチパブリッシング)

YO-KINGさんの”いつかのうみ”をBGMに読んでいたら、なぜかいろんな記憶がぶわ~っとよみがえり、こころががんがん揺さぶられ…
1年の締めくくりとなる、12月に出会えてよかったです。

NS

 

王谷晶ババヤガの夜(河出書房新社)

カッコよすぎて面白すぎて酸欠になるので気を付けてください。数々のシーンを思い出す度に鼻血が出そうです。私も、鬼婆になりたい!

 

清田隆之さよなら、俺たち(スタンド・ブックス)

爽快なほどの人生さらけ出しっぷりと深い考察。ジェンダー論から発して、どう生きるかについても考えさせられました。

 

マーガレット・アトウッド誓願(早川書房)

じつは今まさに読んでいるところなので反則かもしれませんが入れます。(きっぱり)
ドラマを見るかどうかずっと悩んでいます。

 

N

 

 投稿してくれたひとりから寄せられた「いやーごめん、今年、河出の本ばっかりだ!」という声ではっと気がつきましたが、今年は全体的に自社本を紹介している率が高い。例年(他社本もあるよ!)どころか(他社本ばっかりだよ!)というタイトルに変更したほうがいいのではと逡巡するほどだったのに。
 そのくらい今年の河出にいい本が多かった!のも真実ですが笑、社員が軒並み「書店に長時間いられなかった」のも大きな要因でしょう(物理的に、多くの書店さんが休業していた期間もありますし)。

 家にいながらにして本に出合える時代ではありますが、やっぱりふらふら歩いて、きょろきょろ余所見して、自分とは違う人が「いい!」という熱量を感じて思わず手に取った本から新たな世界が見える、そういう広がる出会いがほんとに好きです。

 来年はぼうっと書店にいられるような、良い年が待っていますように。
 皆様どうぞ安全に、お健やかにお過ごしください。来年もどうぞよろしくお願いします。

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