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30年間お待たせ! ダグラス・アダムスの傑作「ダーク・ジェントリー」が今まで翻訳されなかったワケとは?

9784309464565「ダーク・ジェントリー」シリーズがドラマ化されるというニュースが飛び込んできたのは、2016年の年明け頃でした。

これは……さあ、この期を逃さず邦訳を出すんだそこのジャパニーズ、と天国のダグラス・アダムスが言っているに違いない。

 

遡ること10年前——— 天才ダグラス・アダムスの大傑作SFコメディシリーズ「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズの最終5巻目『ほとんど無害』の編集を終えた私は、どこか胸にぽっかりと穴が空いたようでした。 校正ゲラで二度、三度読んでも、新たな笑いのツボを押され、腹を抱えて笑ってしまいながら、しかも、宇宙の、森羅万象の深淵に触れたような気持ちになる。

 

あんな日々は戻ってこないんだな……そんな「ヒッチハイク・ロス」に陥ってしまっていた私を見かね、訳者の安原さんから「実はアダムスにはもうひとつシリーズがありまして…」と、この『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』のレジュメ(この場合は、翻訳者が本の内容を要約して紹介してくれるペーパー。翻訳書の企画立案の初期、もっとも重要な資料となる)が届いたのです。

絶対に面白いに決まってました。なのですが……

「安原さん、これ……無茶苦茶面白そうですけど、ちょっと突拍子なさすぎやしませんか。ある意味『銀河ヒッチハイク・ガイド』の斜め上を行くハチャメチャさですよね? 絶対いつか出したいのですが……ですが、とりあえず、なにか良いタイミングが来るのを少し待つことにしませんか」 と、お話した後、私はレジュメをそっとデスクトップ上の「企画フォルダ」に入れたのでした。

 

ここまで読んでくださった方、すみません。 刊行に至る「プロジェクトX」的秘話を書くつもりが、もしかして、単に、お前のせいでこれまで邦訳が出なかったのかよ! という話になってます? でも、出せたんだから時効ですよね!!!

 

話は冒頭に戻ります! ドラマ化のニュースからのダグラス・アダムスの声を勝手に聞き、そこからは皆様に届けるべく一直線。 安原さんの最高の訳(ほんと最高です)に加え、加藤賢策さんディレクションによる素晴らしいカバーも出来上がってきました。 装画をお願いした、漫画家のひらのりょうさんはもともとダグラス・アダムスの大ファンで、最高の装画に加えて、なんとその作品が動く最高のGIFを作ってくださいました!

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実は、とある物体が上空に描かれていたのですが、最大のネタバレでもあったので、泣く泣く消してもらうことに。何が描かれていたかはぜひ本書をお読みになって想像してみてください。

 

ところで、新潮文庫の「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズを担当したのが、当時、まだ編集者であった現・評論家で翻訳家の大森望さんです。 先日、大森さんに、自分の罪を棚にあげて「なんで、編集者時代、ダーク・ジェントリーは出さなかったんですかー?」と訊ねてみたところ、「だってさー、あれ最後まで読まないと謎が解けないじゃーん」とのお返事。 それって最大の賛辞なんじゃ……。

 

ともかく、本書の主人公であり、探偵モノ史上もっともうさんくさい私立探偵ダーク・ジェントリーによれば、一見バラバラな事象も、宇宙規模で「全体的」に繋がっているそうです。 新潮文庫で邦訳が出されなかったから、あのとき私がフォルダにそっとしまったから、そしてイライジャ・ウッド主演でドラマ化されたから(Netflixで絶賛独占配信中!)、ひらのりょうさんが大学時代に『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読んでいたから……etc.すべてが全体的につながって、満を持して最高の形で、今回の邦訳出版が実現できたんですね、たぶん!

 

長々と裏話を失礼しました。 安原和見さんによる、異例の「訳者まえがき」および、「訳者あとがき」も発売後、web河出で公開いたしますのでご覧ください。 抱腹絶倒の奇想ミステリー、どうぞお楽しみを! 2巻目『長く暗い魂のティータイム』も3月刊行予定で、絶賛作業中です。 (編集M)

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