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なんと発売即重版! 難解な『存在と時間』を、世界一やさしく、かつコンパクトに解説した『誰にもわかるハイデガー』、筒井康隆のまえがきを無料公開!

死を恐れつつも死について知りたい我々のために、あの唯野教授=筒井康隆による世界一わかりやすい講義が一度かぎりよみがえる。
読まずに死ねないハイデガーの名著『存在と時間』を、世界一やさしく、かつコンパクトに解説した超入門書。
このベストセラーの文庫化を記念し、文庫のためのまえがきを無料公開します。

 

文庫版へのまえがき
筒井康隆からのメッセージ

 

 やあやあやあ。お久しぶりです。唯野教授の仮面を脱いだ筒井康隆がご挨拶申し上げま
す。
 この『誰にもわかるハイデガー』がこうして文庫になる前の単行本に「文学部唯野教授・最終講義」というサブタイトルをつけたのは、河出書房新社の吉田久恭という昔なじみの編集者で、そうした方が売れるだろうと考えたからに違いないのだが、これをおれが承認したのは、どうせこんな本売れないだろうと思っていたからである。ところが豈図あにはからんやこいつが売れに売れた。これを知って「しまった」と悔しがったのはこの本のそもそもの原典と言える新潮カセットブック販売元の新潮社のわが担当者・楠瀬啓之であったが、もう遅い。そもそも新潮カセットブックはおれが「誰にもわかるハイデガー」という講演をしたその記録なのだ。しかも池袋西武スタジオ200での講演会は新潮社がセッティングしたものである。悔しがるのも当然であったろう。

 かくして本書は一九九〇年の講演とカセット発売から三十二年後、本書発行の二〇一八
年五月から四年後の二〇二二年、このように文庫化されたのだった。やれやれ。おれも歳
をとる筈だ。
 今校正刷りを見て思うことは、まず、大澤真幸氏による解説である。とても解説とは言
えないような一篇の著作とも言える思索、知識の開陳であり、吉田君がどんなお願いのし
かたをしたのかは知らないが、これを読ませていただくたびに有難さ、申し訳なさでいっ
ぱいになる。大澤氏にはあらためて厚くお礼を申し上げる。
 内容としてはまさしくハイデガーの哲学を空談(空文)でやっているわけだが、これは大澤氏にお褒めいただいた通り、まさに面白おかしくやることによってわかり易くしているのである。しかし、では自分自身はハイデガーの言う通りの先駆的了解をなし得ているかというと、この歳になってもまだわからない。死ぬことは何度も想像したから、さほど怖くはなくなってきたが、死ぬ時の苦痛はやはりいやだなあと思う。しかし今のところさほどの病気もないし、特に健康に気をつけているわけでもない。だから長生きをしようなどとは思っていないものの、家族やかかりつけ医からは妻子や孫のためにも長生きしろ長生きしろと言われているから普通に長生きしているだけである。ハイデガーも別段、早く死ねと言っているわけではない。

 読み返して、この頃のおれ、よくやっていたなあと思う。今ならこんなこと、読書、思
索、講演などを含め、とてもやれないであろう。それでは二度とない、脂がのっていた頃
の小生をご笑覧あれ。

関連本

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著者

筒井康隆

1934年、大阪市生まれ。65年、第1作品集『東海道戦争』刊行。『虚人たち』で泉鏡花文学賞、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、『朝のガスパール』で日本SF大賞、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。

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