創業130周年記念 - 私が薦める河出の本
私が薦める河出の本【立川志の輔さん】
2016.09.26
『この芸人に会いたい』橘蓮二
2014年
「この本の著者、橘君が私の高座写真を撮りはじめて、はや20年。いまや、私が高座で落語をしゃべっている最中、すぐ横の舞台袖にはカメラを構えた彼がいるのが当たり前になってしまったほど。
おかげで撮影した写真の数も膨大なものになるんですが、時折、それらの写真を見返すたび、いつもこう思うんです、「なんて臨場感があるんだ」って。
演劇と違って、座布団の上に座ってしゃべる落語は、動きといえばほとんどが上半身だけ。それを撮影してみたところで、舞台背景にしろ出演者にしろ小道具にしろ衣装にしろ、あまりにもバリエーションが少なくて、よほどの落語ファンでもない限り「どれもおんなじ写真じゃん」って思って思われても仕方がないところがあります。
ところが、彼が撮った写真は、どの落語のどの瞬間、どの台詞を言ってるのかってことまでわかってしまう。それどころか、私自身の声や、それを聴いてるお客さんたちの気配までが手に取るように伝わってくる……改めて、一瞬を切り取って焼き付ける写真の力を教えられたような気がします。」(立川志の輔)