単行本 - エッセイ

グルグルから見えてきた本と世界 山口ミルコ著『ミルコの出版グルグル講義』刊行記念イベントをふりかえって

グルグルから見えてきた本と世界

ミルコさん

2018年2月6日『ミルコの出版グルグル講義』(山口ミルコ著)刊行記念イベント(三省堂池袋本店)をふりかえって

瀬尾アキヲ(ライター)

 

『ミルコの出版グルグル講義』はささやかかもしれないが出版界での事件です。
いままで本の成り立ちについて教えてくれる本はたくさんありました。しかし本の終わりを教えてくれる本、しかもそこからはじまる本というのはなかったように思うからです。
でも終わりは新しいはじまりでもあります。この循環を山口ミルコさん(以下、ミルコさんと略称します)は「グルグル」と名付けました。輪廻転生とか永遠回帰とか難しいことばが浮かんでアタマが痛くなりそうです。だけどそれもこの本のような「グルグル」のことだと思えばわかる気もします。「出版グルグル講義」は「出版」をグルグルということばで教えたような本に見えて実は出版を通して「グルグル」を知るための本なのかもしれません。これが2月14日、バレンタインデーに行われたこの本の出版記念イベントを振り返っての感想のひとつです。
この会は著者のミルコさんと担当の河出書房新社の阿部さんのトークとしてもたれました。最初に阿部さんが著者とこの本を紹介、かつてベストセラー編集者であったミルコさんが退社後、ガンを患ってそれとの闘いとそのあとを2冊の本まとめ、そのあと、大学で出版について講義しつつ、この本が書かれたことが語られました。そこで大事なのはベストセラー編集者としてではなく、そのあとのつらい体験があったからこそ、そこで二つの(それだけではないかもしれない)世界を見て、それぞれでの体験とその落差を見たからこそこの本が書かれたということでした。この導入のあと、話はいきなり会場参加者とのやりとりになりますが、そこでの最初の質問も本の破棄についてです。ミルコさんは断裁された本とさきごろ話題になった恵方巻と重ねて、今日の文明のあるようにまで話をすすめます。これは最後のほうの質問になぜ以前の会社を辞めたのかという質問への答えにも重なります。ミルコさんは2008年のリーマンショックをニューヨークで体験しました。この時に感じた時代の急激な変化の体感はミルコさんにそれまでのように仕事をつづけることを不可能にしてしまったのです。その変化はミルコさん自身の身体まで激変させました。そこから出版を考えるとどうなるか、というのがこの本の他にない問いかけです。しかし出版というか本というもの自体、そういう問いのためにあったはずですよね。そこで最後に出された「これからは本の読者を育てることこそが必要になる」という提言はとても貴重です。
こう書くととても重たいテーマを考えあう暗いイベントと思われるかもしれませんけど、実際はとてもフレンドリーで楽しい場所でした。この本もこんなふうに明るく終わっていました。「『よのなか、グルグル』。だから悲しまないで、と早く言いたい」

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