単行本 - エッセイ
担当編集者が語る、ECD『他人の始まり 因果の終わり』
2017.09.22
ECDは日本でのラップ・シーンの初期から今にいたるまで最前線で活動してきたミュージシャンであるとともに作家・エッセイストとして多くの著書があります。
それだけではありません。2003年以降は反戦運動などの現場に身をおきつづけてきましたが、とりわけ2011年以降の反原発運動、そして近年の大久保などでのレイシストたちへの抗議行動、2015年の安保法案をめぐる運動ではいつもその中心にその勇姿がありました。
また私的な場では24歳年下の写真家・植本一子さんと結婚し二人の子どもを育てています。植本さんも書き手としても著名で、文章をつうじてECD のことを知った読者も多いでしょう。
本書はそのECDの総決算といえる決定的な一冊です。
もともと家族のことを見つめなおすためにECDは本書を書き始めたのですが、その過程で次々と事件がおきます。
弟の割腹自殺、父の入院、そして本人のガンの発見です。これらの衝撃的な事実に向き合いながら、ECDの少年時代、青年時代もあきらかにされていきます。
とりわけ精神に障害をきたして家を出ていった母の日記は読む者を絶句させずにおかないでしょう。これらを見つめるECDは苦しい事態になればなるほどにクールになっていくかのようです。そして最後にたどりついたのは「「一家団欒」は死後の世界にも存在しない」という冷徹な認識でした。
いまもECDは入院生活との往復を繰り返しています。本書は家族という主題をつうじてECD がわたしたちに送る生へのメッセージですが、こんなにも凄まじく美しいメッセージは他の誰にも書くことはできないでしょう。
(編集部A)