単行本 - 芸術
発売から2週間で6刷4万部突破記念 声優・梶裕貴 初の著書 まえがき丸ごと公開!
梶裕貴
2018.05.25
大人気声優 梶裕貴 初の著書『いつかすべてが君の力になる』が発売たった5日という異例のスピードで累計3万部を突破、さらに5月23日には、発売2週間経たずして6刷が決定。累計発行部数は4万部となります。
大ヒットを記念し、本書のまえがきにあたる「はじめに」を丸ごと公開いたします。
梶さんがこの本を書くにあたって抱いた熱い思いと願いに、きっと胸を打たれるはずです。
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はじめに
僕の職業は『声優』です。
声優とは、皆さんもご存知の通り、アニメやゲーム、外国映画の吹き替えなど、さまざまなメディアに『声の役者』として出演する仕事です。
僕が「将来、声優になろう」と心に決めたのは、皆さんと同じ14歳のときでした。
声優という職業を知り、大きな衝撃を受けた当時の僕は、「この仕事しかない!」と居ても立ってもいられなくなり、すぐさま声優になるための行動を起こそうとしました。
でも、声優になるためにはなにをしたらいいのか、なにをするべきなのかがまったくわからない─。
悶々と過ごす日々が、とても苦しかったのを覚えています。
今ではインターネットを使って検索すれば、具体的な方法なんていくらでも出てきますよね。
書店には、声優志望者のための丁寧な教則本も沢山ならんでいます。
でも、巷にあふれている情報だけでは、この道を志すことの本当の魅力・難しさといったものが、未だ伝わりきっていないのではないか、そう思うのです。
同時に、まだまだ模索中でありながらも、必死にその道を歩んできた自分だからこそ、なにかを伝えることはできないだろうかとも考えました。
30代の僕は、皆さんからすれば年の離れた立派な大人に見えるかもしれませんが、この道のプロとしては、まだ〝ひよっこ〟に過ぎません。
けれど、そんな皆さんと比較的近い目線を持っている自分だからこそ、なにか響く言葉も伝えられるかもしれない─。
そう考えて、この本を書くことにしました。
夢を持つことで、どれほど人生が楽しく、めまぐるしく、愛しいものになるのか。
そういったことを、僕のこれまでの半生を通して少しでも感じていただけたらと思うのです。
一方で、この本を読んでもらうのは、少し恥ずかしい気持ちもあります。
中学生の頃、はじめて声優になりたいと思ったときの意気込み。
なにをやってもうまくいかなかった下積み時代の迷走ぶり。
そして、どこかぎこちなかった家族との関係など。
あらゆることを、赤裸々に書き記していますから。
ただ、30代になった今、あらためて自分の歩んできた道を振り返ってみると、10代の頃に悩んだこと、20代でがむしゃらに努力してきたことは、とても大切な時間だったんだなと感じます。
そう。僕も皆さんと同じように、自分自身のことや家族関係で悩み、将来について不安を抱えていた時期もあったのです。でも、人生の早い段階で「なりたい自分」を想像できたことで、救われた部分も沢山あったように感じています。
なので皆さんには、まず「夢を持つこと」、それによって「人生の見方が変わる可能性がある」ということを知ってほしいのです。
そして、その夢は手の届かないどこか遠いところにあるのではなく、あくまで皆さんが過ごされている今……14歳の日常からの延長線上にあるということも、心にとめておいてもらえたらと思うのです。
この本では、僕の経験や見解をもとに、色々な角度から『声優』という職業について考えてみました。
そこで、まずは本書を手にとってくださった皆さんに、ある言葉を贈りたいと思います。
すべてが君の力になる。
これはかつて、皆さんと同じ14歳当時に僕自身が感銘を受けた言葉でもあり、僕の生き方・考え方そのものにもなっている言葉です。
常に目の前のことと真剣に向き合い、全力でぶつかり続ける─。
この本が、これからを生きる皆さんにとっての、なんらかのヒントになってくれたら。同時に、皆さんの中で、声優という仕事についての理解がより深まるきっかけになってくれたら。
それ以上の幸せはありません。
梶裕貴『いつかすべてが君の力になる』(14歳の世渡り術シリーズ・河出書房新社)より