ためし読み - 文藝

阿部和重 約十年ぶりの短編集『Ultimate Edition』刊行記念 全収録作解説インタビュー(10)「Goodbye Cruel World」

阿部和重 約十年ぶりの短編集『Ultimate Edition』刊行記念 全収録作解説インタビュー(10)「Goodbye Cruel World」

十月二十五日、全十六作を収録した阿部和重の短編小説集『Ultimate Edition』が刊行された。初めて阿部和重を読む人に、阿部和重のこれからを読みたい人にうってつけの作品集。氏の作品を知り尽くすフィクショナガシン氏を聞き手に、この究極の一冊への扉として全収録作自作解説を十六日連続でお届けする。

 

「Goodbye Cruel World」

イギリスのロックバンド「Pink Floyd」の楽曲名

──これもオチが効いています。少年の物語と思って読み進めると、意外な事実に突き当たります。読み始めたときには想像もできないような結末です。あなたにショートショートの才能がこんなにもあるとは驚きました。

「ホームレスの方々が街頭で売って、収益の一部を受け取れる仕組みになっている『ビッグイシュー』からの依頼で書いた一編です。『ホーム』をテーマに書くという企画でした。『ホーム』という言葉の受けとめ方は人それぞれ異なり、意味合いもさまざまです。わたくしはこの作品以外でも、一つのモノや言葉がもっている多義性を利用した小説を書いてきたところがあります。そういう部分を分かりやすく出せた作品ではないかと見ています」

──造語とか突飛な何かを創作するのではなくて、見慣れた言葉に対して思いがけない解釈を加えていく。そのことによって、多義性が生じてくるわけですね。そうしたひとつひとつの試みがこうやって単行本に収録されることで、テーマに沿って書き、誌面で掲載された初出とはまた違った意味を持つ気がします。

「そうですね。そうなればいいなと、本当に思いますね」

(つづきは明日4日公開)

関連本

関連記事

著者

阿部和重

1968年山形県生まれ。1994年「アメリカの夜」で第37回群像新人文学賞を受賞しデビュー。『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞・第58回毎日出版文化賞をダブル受賞、『グランド・フィナーレ』で第132回芥川龍之介賞、『ピストルズ』で第46回谷崎潤一郎賞を受賞。他の著書に『Orga(ni)sm』『ブラック・チェンバー・ミュージック』等がある。

福永信

1972年生まれ。98年「読み終えて」で第一回ストリートノベル大賞受賞。著書に『アクロバット前夜』、村瀬恭子との共著『あっぷあっぷ』などがある。

人気記事ランキング

  1. ホムパに行ったら、自分の不倫裁判だった!? 綿矢りさ「嫌いなら呼ぶなよ」試し読み
  2. 『ロバのスーコと旅をする』刊行によせて
  3. 鈴木祐『YOUR TIME 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』時間タイプ診断
  4. 日航123便墜落事故原因に迫る新事実!この事故は「事件」だったのか!?
  5. 小説家・津原泰水さんの代表作「五色の舟」(河出文庫『11 -eleven-』収録)全文無料公開!

イベント

イベント一覧

お知らせ

お知らせ一覧

河出書房新社の最新刊

[ 単行本 ]

[ 文庫 ]