単行本 - エッセイ

益田ミリ×武田砂鉄——異色の顔合わせで振り返る、「性」のあれこれ。共著『せいのめざめ』刊行を記念して、お二人に12の質問をしました。

せいのめざめ

 

益田ミリ[まんが] 武田砂鉄[文]

 

修学旅行の夜、プールの授業、エロ本と夏休み……。「あの頃、女子は何を考えていたのだろう?」「教室の男子と性は、うまく結びつかなかった——」妄想と憧れが暴走した日々を鮮やかに描く。

(cakesで試し読みできます。こちらからどうぞ!)

 

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せいのめざめ』刊行記念Q&A

 

イラストレーターの益田ミリさんとライターの武田砂鉄さんへ、
お二人の共著『せいのめざめ』刊行を記念して、12の質問をしました。
異色の顔合わせで振り返る、「性」のあれこれ。
どうぞお楽しみ下さい。

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Q1・お互いのパートをどう読みましたか?

益田 男の子って、こんな妄想や勘違いをしてたんだ、知らなかった、というエピソードには、やはり笑みがこぼれました。水着の中にティッシュだか、ガーゼだかを詰め、股間を大きく見せていたという武田さんのクラスメイトの話とか。

武田 高校を卒業してから15年弱、親しくなった女性たちに「ところであの頃、授業中に渡していた手紙って、どんなことを書いてたの?」と尋ねてきたのですが、うやむやにされるばかりでした。それをようやく知ることができた、という高揚感があります。

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Q2・共著書ゆえに大変だったところはありましたか?

益田 描くのは個人的なことなので、特にないです。女の子たちが、性の謎を解こうと苦戦していた様子を描いてみたいと思っていました。それは、「大人になっていく怖さ」を描くことでもありました。

武田 書き始めた頃は「益田さん、どういうことを書いてくるのかなぁ」と身構えていたのですが、そもそも男子便所内の雑談と女子便所内の雑談は共有する必要がなかったのですから、気にせずに素直に書きました。なので、大変、という感覚はなかったです。

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Q3・ご自身の性の思い出を振り返ってみていかがでしたか?

益田 この本でマンガにしたエピソードなんですが、授業中、女友達が描いた男性器のイラストが回ってきたことがあったんです。描くほうも、見るほうも「現物」を知らないから間違いに気づかないんです。振り返ってみれば、めちゃくちゃ味わい深い絵でした。

武田 あの頃の記憶がとにかく色濃く、記憶の浅いところを掘るだけでたくさん出てきたのですが、書くうちに、しまっておきたかった記憶をも掘り起こしてしまい、自分の記憶が持つ攻撃力にうろたえました。

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Q4・子供の目から見て、妙に色っぽいと感じた大人っていましたか?

益田 外国映画に出てくる、スケスケのネグリジェ姿の女性。

武田 教育実習生という存在は、男女ともに色っぽい対象として見られていた気がします。サッカー部の練習試合を見に来た女性の実習生がいたのですが、控えキーパーだったこちらは「控えっぽくない態度=試合に出ている選手よりも立場が上なのかも=温存されている選手」と思われるような声出しに徹しました。

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Q5・もしも中学生の頃にパソコンがあったら、真っ先になんていう言葉を検索しましたか?

益田 Hなワードならば、「性行為」でしょうか。教科書の言葉を調べてるだけ、という言いわけ付きで。
慣れてきたら「男子が好きな下着」など長いワードを検索しはじめたと思います。

武田 自分の名前です。

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Q6・Hなビデオやグラビア雑誌、友人からの情報、都市伝説……性を知るアイテムがたくさん登場しましたが、男子/女子の時代を経て、未だに残っている男性/女性のフシギは何ですか?

益田 寝返りや、うつぶせ寝のとき、邪魔にならないのか気がかりです。

武田 どうやら異性の皆さんもその手の本やビデオも所持していたとのことなんですが、どのような供給源が一般的であったのか。最初に「持ってるから見よー」と切り出す人の勇気、その勇気を「えー、ひくわ」みたいな感じで踏んづけられた人もいるのではないかと心配します。

せいのめぜめ_男性下着

 

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Q7・当時、自分だけがほのかに「エロい」と思っていたことはありますか?

益田 下着売り場の男性マネキン。パンツをずらしたらどうなっているのか興味津々でした。

武田 自転車で学校へ向かう道中にラブホテルが一軒あったのですが、ホテルから出ようとする車を一時停止させるようなタイミングで横切り、その両者の困惑した顔を見ることです。

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Q8・あの頃の自分に、かけてあげたい言葉はありますか?

益田 「おっぱいはかたいままじゃないから安心していいよ。」

武田 「まったく恐ろしいことだけど、今、学校で諸々うまいこといってる奴らって、大人になってもうまくいってるよ。」

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Q9・今、街中でアツアツの学生カップルを見て、思うことはありますか?

益田 とにかくかわいい。この世界に素敵な光景をありがとう、と言いたいです。

武田 そのうちアツアツじゃなくなるけど、何だかんだで思い直して、改めてアツアツになったりするのかな、などと想像します。

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Q10・性の謎が解けて、逆に失ってしまったものはありますか?

益田 「知らないことを想像で補おうとする姿が最高に面白くて笑った」と、又吉直樹さんが、帯に書いてくださったとおりです。想像で補うことを失ったんだと思います。
最近、足立紳監督の「14の夜」という映画を観たら、中学生の男の子たちが、おっぱいはチェルシーの味らしい、と盛り上がっていたシーンがありました。いいなぁと思いました。

武田 本にも書きましたが、何の経験もないのに曖昧な情報をいくつも持っている奴が「エロ博士」的なあだ名で崇拝されていました。それは勘違いの集積だったのだけれど、あの無尽蔵な想像力って今は持ち得ないものだな、と思います。あの頃に失っておくべきもの、とも思います。

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Q11・普段は親しく会話ができない異性のクラスメート(や部活の仲間等)でも、「ああ、なんか分かり合えてるかも」と仲間意識を感じたエピソードはありますか?

益田 お互い何も起こらないバレンタインデーの休み時間。

武田 合唱祭になると、普段、学校にろくに来ないような奴が「まとまろうよ」などとしゃしゃり出ます。そういう姿にイライラして、彼には聞こえないように「ったくこんな時だけ」とつぶやいたら、周囲の女子が納得してくれている感じだったのは嬉しかったです。

せいのめざめ_制服

 

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Q12・今回の本を、もっとも読んで欲しくない人は誰でしょうか?

益田 老若男女、たくさんの方に読んで欲しいです。ちなみに「金玉」の漫画からはじまります。

武田 上のほうの階層にいた同級生。

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いかがでしたか?もっと深い話は本書でご堪能ください。

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著者

益田ミリ

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主著に漫画『沢村さん家のこんな毎日』『僕の姉ちゃん』等。『すーちゃん』シリーズが2013年に映画化。エッセイに『そう書いてあった』等がある。

武田砂鉄

1982年生。出版社勤務を経てライターに。『紋切型社会』で「第25回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞」受賞。「第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」受賞。著書に『芸能人寛容論』。

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