文藝

今日における批評の条件、創造の条件を探究…博士論文をもとにしたドゥルーズ研究書を読み解く

 『非美学』福尾匠 著 評:小倉拓也(フランス哲学研究者)    迷宮のような本だ。迷宮は、複雑で出口を見いだすことが困難な建築物だが、実際には分岐のない一本道である。ボルヘス的な直線ではない。一本道である。私にとってこの本は、一本道だと信じることでしか歩きとおすことが

小学校の先生に恋した少女の動揺と混乱の日々 極限の理性を書いた作家・リスペクトル作品の読みどころとは?

 『ソフィアの災難』クラリッセ・リスペクトル 著福嶋伸洋/武田千香編 訳 評:島本理生(作家)   クラリッセ・リスペクトルの小説を途中まで読んだという友人が言った。「難解だけど、自分の中でピースが一つ合ったら、その瞬間にすべて理解できるような気もする」 それはリスペク

紫式部、現代京都でオペラをかます!? 直木賞作家・河﨑秋子が語る、古川日出男のワンアンドオンリーな快作の魅力

 『京都という劇場で、パンデミックというオペラを観る』古川日出男 著 評:河﨑秋子(作家)   パンデミック。一瞬、その意味を正確に思い出せず、そんな自分に驚いた。たった三、四年前の新型コロナ騒ぎに伴う制約や息苦しさを、進んで記憶に留めておきたいと思えなかったせいか。そ

マリリン・モンローを通して女性の差別問題を描いた小説『マリリン・トールド・ミー』とは? 花束書房の代表・伊藤春奈が紹介

 『マリリン・トールド・ミー』山内マリコ 著 評:伊藤春奈(花束書房/文筆家・出版業)    マリリン・モンローをフェミニズムの視点で見直す動きがあるとどこかで読み、調べてみようと思いつつ数年が経ち、気づくと「誰か書いてくれないかな」になっていた。Netfli

全人類の不死と祖先の復活、そして宇宙進出を思想とする「ロシア宇宙主義」とは? 思想家ボリス・グロイスの論文集を紹介

 『ロシア宇宙主義』ボリス・グロイス編乗松亨平監訳上田洋子/平松潤奈/小俣智史訳 評:木澤佐登志(文筆家)   ロシア宇宙主義と呼ばれる特異な思想潮流がかつてロシアに存在した。その端緒は一九世紀末に活動したニコライ・フョードロフにまで遡る。フョードロフの哲学を一言で要約

東日本大震災後、なんとか暮らしを立て直そうとしてきた人々の声を掬い取る いとうせいこうのノンフィクションを瀬尾夏美が語る

 『東北モノローグ』いとうせいこう著 評:瀬尾夏美(アーティスト)     東日本大震災から十年後、二〇二一年から三年ほどの間に、震災で被災した岩手、宮城、福島、そして後方支援をしていた山形や東京で話を聞き、文字に起こし、書かれた十七人分の語りが収め

親を憎み、家族を呪い、この国が許せない元「天才」子役と「炎上系」俳優の抵抗を描く衝撃作 作家・鳥羽和久が読みどころを語る

 『生きる演技』町屋良平著 評:鳥羽和久(作家)     演技といえば世間的には自分とは違う偽者になることだが、人は誰しも生きるうえで演技をしている。この小説の語り手である二人の高校生、生崎陽きざきようと笹岡樹ささおかいつきにとって、演技することは、

謎の国際テロも大統領選もあらゆる重要な仕事も、全てが無に帰る フランス発大ベストセラー

ヨーロッパを代表する作家・ウエルベックによる最新作『滅ぼす』が刊行。本作の魅力をSF作家の樋口恭介さんが語る。   「滅ぼす(上・下)」ミシェル・ウエルベック 著野崎歓/齋藤可津子/木内尭訳  評:樋口恭介(作家)   宇宙が誕生したとき、巨大な爆発

百合でもシスターフッドでもない、名づけられない関係性 女性同士の支配と依存を描いた小説

第167回芥川賞候補にもなった注目の作家・山下紘加による最新作『煩悩』が刊行。本作の魅力を歌人の平岡直子さんが語る。   「煩悩」山下紘加 著 評者:平岡直子(歌人)    百合やシスターフッドと呼ばれる関係性が好きだ。女性同士が連帯し、無

「予測不能にして必然的なラスト」恋愛を手段に生き延びる女子を描く、気鋭の作家の最新作

気鋭の作家・日比野コレコによる文藝賞受賞後第一作『モモ100%』が刊行。本作の魅力を詩人の向坂くじらさんが語る。   「モモ100%」日比野コレコ 著 評:向坂くじら(詩人)    愛することはむずかしい。やっかいなことに、相手に向かう感情

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