書評

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全人類の不死と祖先の復活、そして宇宙進出を思想とする「ロシア宇宙主義」とは? 思想家ボリス・グロイスの論文集を紹介

 『ロシア宇宙主義』ボリス・グロイス編乗松亨平監訳上田洋子/平松潤奈/小俣智史訳 評:木澤佐登志(文筆家)   ロシア宇宙主義と呼ばれる特異な思想潮流がかつてロシアに存在した。その端緒は一九世紀末に活動したニコライ・フョードロフにまで遡る。フョードロフの哲学を一言で要約

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東日本大震災後、なんとか暮らしを立て直そうとしてきた人々の声を掬い取る いとうせいこうのノンフィクションを瀬尾夏美が語る

 『東北モノローグ』いとうせいこう著 評:瀬尾夏美(アーティスト)     東日本大震災から十年後、二〇二一年から三年ほどの間に、震災で被災した岩手、宮城、福島、そして後方支援をしていた山形や東京で話を聞き、文字に起こし、書かれた十七人分の語りが収め

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親を憎み、家族を呪い、この国が許せない元「天才」子役と「炎上系」俳優の抵抗を描く衝撃作 作家・鳥羽和久が読みどころを語る

 『生きる演技』町屋良平著 評:鳥羽和久(作家)     演技といえば世間的には自分とは違う偽者になることだが、人は誰しも生きるうえで演技をしている。この小説の語り手である二人の高校生、生崎陽きざきようと笹岡樹ささおかいつきにとって、演技することは、

大野露井『塔のない街』刊行記念 「異端にして正統――大野露井論」(13000字)

「塔のない街」評者=川本直(小説家・文芸評論家)   長い間、大野露井に畏敬の念を懐いていた。時代の潮流など気にも掛けずに我が道を行くこの文学者を、私が初めて観測したのは、2014年、とあるWebサイトの辻原登が審査員を務める新人賞でのことだった。大野露井が新人賞を受賞した長編小

恩田陸『灰の劇場』文庫化記念! 武田砂鉄さん書評掲載。──日常と絶望は近い

  今、生きている人間が全員漏れなく死ぬことになっているというのは、なかなか恐ろしい事実である。いや、でもですね、自分に限ってはそんなことなくって、もうずっと生きているんです、かれこれ540年くらいになりますかね、という人は見当たらない。みんな死ぬのだ。「死」を漠然と怖がっていた幼少期、自

恩田陸『灰の劇場』文庫化記念! 小島慶子さん書評掲載。──想像の中では誰もが等しく肉体をもたない生者である

  恩田氏本人を思わせる作家が主人公である。実際の事件を題材にした作品が舞台化されることになり、役者のオーディションに立ち会う。そこで思いがけず、大きな動揺を覚えることになる。「ほんとうにあったこと」は、形にしようとすればするほど見えなくなっていく。一度きりの人生は、誰もその本当の姿を知る

恩田陸『灰の劇場』文庫化記念! 斉藤壮馬さん書評掲載。──「救済を感じた」ラストシーン

記憶と記録――恩田陸著『灰の劇場』斉藤壮馬  灰色の羽根が降り積もり、やがてすべてを掻き消してしまう。あとに残るものは、いったいなんなのだろう。記憶する、記録するとは、いったいどういうことなのだろう。恩田陸さんの『灰の劇場』は、そんなことをしみじみと考えさせられる、不思議な味わいの作品だっ

神話の解体と誕生――文庫版刊行記念! 歌人・瀬戸夏子が読む、川本直『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』

 「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」川本直 著 評者・瀬戸夏子(歌人)    もはや文学に贅沢など許されない時代に、これ以上ないほど、溢れ出しそうなほど山盛りに模造のダイヤを詰め込んだ宝箱、きわめて反時代的な書物である。 もう二十世紀のように文学からスターな

謎の国際テロも大統領選もあらゆる重要な仕事も、全てが無に帰る フランス発大ベストセラー

ヨーロッパを代表する作家・ウエルベックによる最新作『滅ぼす』が刊行。本作の魅力をSF作家の樋口恭介さんが語る。   「滅ぼす(上・下)」ミシェル・ウエルベック 著野崎歓/齋藤可津子/木内尭訳  評:樋口恭介(作家)   宇宙が誕生したとき、巨大な爆発

百合でもシスターフッドでもない、名づけられない関係性 女性同士の支配と依存を描いた小説

第167回芥川賞候補にもなった注目の作家・山下紘加による最新作『煩悩』が刊行。本作の魅力を歌人の平岡直子さんが語る。   「煩悩」山下紘加 著 評者:平岡直子(歌人)    百合やシスターフッドと呼ばれる関係性が好きだ。女性同士が連帯し、無

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