
東日本大震災後、なんとか暮らしを立て直そうとしてきた人々の声を掬い取る いとうせいこうのノンフィクションを瀬尾夏美が語る
評者:瀬尾夏美(アーティスト)
『東北モノローグ』いとうせいこう著 評:瀬尾夏美(アーティスト) 東日本大震災から十年後、二〇二一年から三年ほどの間に、震災で被災した岩手、宮城、福島、そして後方支援をしていた山形や東京で話を聞き、文字に起こし、書かれた十七人分の語りが収め
2024.05.17書評
評者:瀬尾夏美(アーティスト)
『東北モノローグ』いとうせいこう著 評:瀬尾夏美(アーティスト) 東日本大震災から十年後、二〇二一年から三年ほどの間に、震災で被災した岩手、宮城、福島、そして後方支援をしていた山形や東京で話を聞き、文字に起こし、書かれた十七人分の語りが収め
2024.05.17評者:鳥羽和久(作家)
『生きる演技』町屋良平著 評:鳥羽和久(作家) 演技といえば世間的には自分とは違う偽者になることだが、人は誰しも生きるうえで演技をしている。この小説の語り手である二人の高校生、生崎陽きざきようと笹岡樹ささおかいつきにとって、演技することは、
2024.05.17評者=川本直(小説家・文芸評論家)
「塔のない街」評者=川本直(小説家・文芸評論家) 長い間、大野露井に畏敬の念を懐いていた。時代の潮流など気にも掛けずに我が道を行くこの文学者を、私が初めて観測したのは、2014年、とあるWebサイトの辻原登が審査員を務める新人賞でのことだった。大野露井が新人賞を受賞した長編小
2024.04.05評者・武田砂鉄(ライター)
今、生きている人間が全員漏れなく死ぬことになっているというのは、なかなか恐ろしい事実である。いや、でもですね、自分に限ってはそんなことなくって、もうずっと生きているんです、かれこれ540年くらいになりますかね、という人は見当たらない。みんな死ぬのだ。「死」を漠然と怖がっていた幼少期、自
2024.02.02評者・小島慶子(タレント、エッセイスト)
恩田氏本人を思わせる作家が主人公である。実際の事件を題材にした作品が舞台化されることになり、役者のオーディションに立ち会う。そこで思いがけず、大きな動揺を覚えることになる。「ほんとうにあったこと」は、形にしようとすればするほど見えなくなっていく。一度きりの人生は、誰もその本当の姿を知る
2024.02.02評者・斉藤壮馬
記憶と記録――恩田陸著『灰の劇場』斉藤壮馬 灰色の羽根が降り積もり、やがてすべてを掻き消してしまう。あとに残るものは、いったいなんなのだろう。記憶する、記録するとは、いったいどういうことなのだろう。恩田陸さんの『灰の劇場』は、そんなことをしみじみと考えさせられる、不思議な味わいの作品だっ
2024.02.02評者・瀬戸夏子(歌人)
「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」川本直 著 評者・瀬戸夏子(歌人) もはや文学に贅沢など許されない時代に、これ以上ないほど、溢れ出しそうなほど山盛りに模造のダイヤを詰め込んだ宝箱、きわめて反時代的な書物である。 もう二十世紀のように文学からスターな
2023.12.21評者:樋口恭介(作家)
ヨーロッパを代表する作家・ウエルベックによる最新作『滅ぼす』が刊行。本作の魅力をSF作家の樋口恭介さんが語る。 「滅ぼす(上・下)」ミシェル・ウエルベック 著野崎歓/齋藤可津子/木内尭訳 評:樋口恭介(作家) 宇宙が誕生したとき、巨大な爆発
2023.12.11評者:平岡直子(歌人)
第167回芥川賞候補にもなった注目の作家・山下紘加による最新作『煩悩』が刊行。本作の魅力を歌人の平岡直子さんが語る。 「煩悩」山下紘加 著 評者:平岡直子(歌人) 百合やシスターフッドと呼ばれる関係性が好きだ。女性同士が連帯し、無
2023.12.08評者:向坂くじら(詩人)
気鋭の作家・日比野コレコによる文藝賞受賞後第一作『モモ100%』が刊行。本作の魅力を詩人の向坂くじらさんが語る。 「モモ100%」日比野コレコ 著 評:向坂くじら(詩人) 愛することはむずかしい。やっかいなことに、相手に向かう感情
2023.12.07