花歌は、うたう

『花歌は、うたう』 最終話

宮谷ハルオ 四十五歳 大きな画面で観たかった。音は、まぁスマホもパソコンも大差ないだろうけど、YouTubeを、大きな画面で、ハッキリと花歌の歌う姿を観たかった。歌を、聴きたかった。けれども、この街で知り合いは誰もいない。この家にはパソコンもiPadもない。どうするか悩んで、結局〈犬狼都市

『花歌は、うたう』 11

岩崎うた 六十七歳 「そうかい」〈廉清〉で、また若い男と二人きりの内緒の夕食。恭一くんから、戻ったと連絡があった。そして、あいつを、ハルオを見つけたとのこと。すぐにでも報告をしたいのだけれども、捜している間に仕事が詰まっていてそれをまずは片づけなければならない。少し待ってくれますかと。もち

『花歌は、うたう』 10

佐々岡睦美 十七歳 ついさっきまで向かい合っていたテーブルにわたしだけ遊園地に置き去りにされた子供みたい楽しかったっていう文字が大きく浮かんででもふわふわと漂っていてどこかに消えてしまいそうで優しさだけの愛は見えない?傷ついた方が深く残る?ひとりになるより憎み合ってふたりで別れの予感ってい

『花歌は、うたう』 9

今藤凌一 十七歳 ガキだよなってつくづく思う。十七歳なんて、ガキだ。高校生だ。子供だ。誰かを殺したって世間に名前は出ない。何かをしようと思ったって、学生がすることは勉強だって言われる。そんなことはわかってるけど、勉強以外にしたいことはたくさんある。スポーツはいいよなって思うんだ。ガキでも、

『花歌は、うたう』 8

岩崎うた 六十七歳 トンカツを作って晩ご飯を食べたその後に三人揃って家族会議だなんて、一体何を言い出すのかと思えば。「そんなことかい」「そんなことってー」花歌が口を尖らせた。この子は本当にいくつになっても仕草や表情が子供みたいで、まぁ実際に子供なんだけれども、高校生にもなれば少しは女の色気

『花歌は、うたう』 7

宮谷花歌 十七歳 信じてるの明日っていう日をわらえなくても とどかなくても まもらなくてもみかけなくても ありえなくても わらえなくてもでも 信じてるの明日っていう日をその日が来るっていうのを 眠ってても心臓が覚えているからずっとずっと ずっとずっとリズムを刻んでいるの明日のハートを ビー

『花歌は、うたう』 6

宮谷花子 四十二歳 仕事から帰ってきて、家に花歌がいないときはすぐにわかる。部屋の電気がついていないから。あの子は開けっ広げと言うかなんというか、カーテンも閉めないでいることが多いから。庭の桜やカリンの木で道路からは見えないから良いようなものだけど、もう少し女の子らしい慎みとかそういうもの

『花歌は、うたう』 5

佐々岡睦美 十七歳 花歌がギターを持った。実は、それだけで花歌の雰囲気が変わることをきっと花歌も知らない。自分ではわかっていないと思うんだ。オーラなんていう簡単な言葉を使うのはちょっとあれかな、って思うんだけど、そんなふうに言うしかないものがグン! って増えるのがわかるんだ。よくアニメで超

『花歌は、うたう』 4

今藤恭一 二十九歳 〈ハルオ〉は俺たちの世代にとってはマストなアーティストだったよ。小学校の頃からずっと〈ハルオ〉の歌とパフォーマンスは大好きだったし憧れだったし、日本のアーティストで自分にとってのナンバーワンは誰かって訊かれたら、俺は迷わずに〈ハルオ〉って答える。別にミュージシャンを目指

『花歌は、うたう』 3

宮谷花歌 十七歳 お揃いのパジャマがあるんだよ。わたしの家にもむっちゃんの家にも。それはわたしたちが小学校の頃からずっと。それぞれの家によくお泊まりに行ってたから、どっちの家でもお揃いのパジャマを用意するようになって、それがずーっと今も続いてる。だから、わたしとむっちゃんはいつでもそれぞれ

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