死にかけた世界を歩く──リン・ディン『アメリカ死にかけ物語』書評
磯部涼
「まずは飲み屋に行きましょう」。開口一番にリン・ディンは言った。一五〇万人都市・川崎市の玄関口である川崎駅改札前は、平日の昼間にもかかわらずごった返している。彼と親しい仲介者が送ってくれたメールには、「リンはこんな感じの中肉中背のおじさんです」という愛のあるコメントと共にプロフィール写真が添付されて
2019.02.25外国文学
磯部涼
「まずは飲み屋に行きましょう」。開口一番にリン・ディンは言った。一五〇万人都市・川崎市の玄関口である川崎駅改札前は、平日の昼間にもかかわらずごった返している。彼と親しい仲介者が送ってくれたメールには、「リンはこんな感じの中肉中背のおじさんです」という愛のあるコメントと共にプロフィール写真が添付されて
2019.02.25評者・ イ・ラン
この本は、一二八週間前の二〇一六年六月一二日に死んだ私の友達が最後まで読んでいた本だ。主(あるじ)なく部屋に残されたかばんを、友達をずっと記憶しておくためにそのまま持ってきた。その中には、病んだ自分の体調を記録した紙や、半透明の薬の袋などが転がっていた。そしてハン・ガンの小説『すべての、白いものた
2019.02.20ロクサーヌ・ゲイ/小澤英実/上田麻由子
訳者あとがき 『むずかしい女たち』Difficult Womenの作者ロクサーヌ・ゲイは、二〇一四年のエッセイ集『バッド・フェミニスト』(野中モモ訳/亜紀書房)を機に、世界中から注目を集める文化的アイコンになった。ポップ・カルチャーから政治、人種、アイデンティティにいたる多彩なトピックを、
2018.11.20渡辺由佳里(エッセイスト、翻訳家)
『パワー』ナオミ・オルダーマン 安原和見訳 【解説】渡辺由佳里 アメリカでは2016年の大統領選挙で、初めての女性大統領になることが期待されたヒラリー・クリントンが、ドナルド・トランプに敗れた。得票数ではクリントンのほうがトランプよりも280万以上多かったのだが、アメリカ独自の「選挙人制度
2018.10.252019年3月22日、かまわぬ謹製 ゴーリーてぬぐいを、当選者の皆様のお宅に発送いたしました(こちらは発送準備中の写真です)。到着をどうぞお楽しみに。このたびは当キャンペーンに、大変多くのご応募、誠にありがとうございました。社員一同、心より感謝申し上げます。 河
2018.10.23評者・岡田利規
小説では登場人物がその世界の中で発した言葉のことをせりふと言うけれど、演劇だと舞台上で役者が発する言葉のことをせりふと言う。ふたつは全然違う。役者が舞台上で発する言葉が、その役者が演じる登場人物が作品世界内で発する言葉だとは限らないから。小説では地の文というのはせりふとは区別されている
2018.10.11ご好評につき満席になりました。新シリーズ「須賀敦子の本棚 全9巻」刊行記念。池澤夏樹トークイベント開催!〜新たなる須賀敦子の世界〜1990年、61歳で衝撃のデビューを飾った須賀敦子は、それからわずか8年後の1998年、惜しまれつつ亡くなりました。しかし、没後20年を迎えてなお読者は増え続けており、作
2018.05.10須賀敦子
須賀敦子没後20年記念出版須賀敦子の本棚【全9巻】監修・巻末エッセイ=池澤夏樹須賀敦子が選者となって 自分の愛する作家・作品を集めたら── 夢のような企画を実現させた 珠玉の海外文学コレクション。新発見原稿、新訳、初訳を収録! 2018年6月より刊行中────────────────────────
2018.03.08アメリア・グレイ/松田青子
このアンバランスな世界で見つけた、私だけの孤独――箱に閉じ込められてしまったふたりの男、朝起きたら種に覆われていた女、テスの手は鉤爪に変わり、フランシスは魚しか食べないことにした……。AMからPMへ、時間ごとに奇妙にずれていく120の物語。いまもっとも注目を浴びる新たな才能の鮮烈デビュー作を、松田青
2017.09.20円城塔
円城塔呼ぶだに得るは、獏、食え捨てる、干せ姉へ、見やる綱誉む、酔えるぜ仮屋。(ヨブ ダニエル ハバクク エステル ホセア ネヘミヤ ルツ ナホム ヨエル ゼカリヤ) ──結局、どんな話?と疑いを持たない口調で問われる。一体いつから小説は、どんな話?と一言で訊いてよいものになったのか。あるい
2017.06.20