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パートナーを愛していますか?『夫婦という病』

『夫婦という病』岡田尊司『夫婦という病』岡田尊司

夫婦という病

夫を愛せない妻たち

岡田尊司(精神科医)

 

パートナーを愛していますか?

 

夫婦やパートナーとの関係で悩んでいる人が、とても増えている。夫と、妻とやっていくのが無理だと感じている人も多い。経済的な問題や子どもへの影響を考えて、どうにか夫婦を続けているが、本当は別れたいと思っている人も少なくない。また、夫や妻のことを大切に思い、うまくやっていきたいと望んでいるのだが、実際に面と向かうと、どうしてもぎくしゃくし、責め合い、気持ちや行動がすれ違ってしまうというカップルも多い。どうすればもっと気持ちよく相手を受け入れ、互いを大切にできる関係になれるのか。
筆者のクリニックや提携するカウンセリング・センターには、そうした悩みを抱えたカップルが大勢訪れる。夫のDVや夫婦間の問題を何とかしたいという人だけでなく、最初は、ご本人のうつや不安、イライラなどで相談に来られたり、子どもの問題で助けを求めて来られたのが、背景を探っていくうちに、そこに夫婦の問題が深くかかわっていることがわかってくることもしばしばだ。そうしたケースでは、むしろ夫婦の関係を改善することで、ご本人の精神状態や子どもの問題が落ち着いていくということも多い。
また、結婚したものの、パートナーが、子どもをもつことに消極的だったり、そもそも性的な営みをもつことに関心が乏しく、一方のパートナーが欲求不満に苦しんだり、もう一方のパートナーが、相手の性欲をもてあまし、拒否反応を起こしているという状況も多い。
夫婦の絆自体が間違いなく脆くなっている。離婚率は、婚姻率の三分の一を超え、三組に一組が離婚している計算になる。アメリカ並みの二組に一組に到達する日も近いだろう。不倫に走る人は五百万人とも言われ、家庭を脅かす深刻な問題となっている。パートナーとの絆が生涯続いてほしいと願う人と、その絆を束縛と感じ、そこから脱したいと感じる人のどちらもが苦しんでいる。
さらに、近年増えているのは、パートナーに軽度の発達障害やパーソナリティ障害があるケースで、パートナーと気持ちを共有することができず、虚しい思いを味わったり、また相手の行動が理解できず、困り果てていたりというケースも多い。
社会の形が急激に変わり、夫婦や愛の形も変わろうとしている。しかし、まだ安定した形にたどり着けず、社会全体が、生みの苦しみを味わっているとも言える。
一体どうすれば、パートナーとの関係を、あなたにふさわしい安定したものに築いていけるのか。すでにその関係がほころびだし、ぎすぎすし始めているとしたら、どのようにして修復し、再生することができるのか。それとも、もはや修復不可能なものとして見切りをつけ、新たな人生に進んでいくべきなのか。その場合、どこで見極めればいいのか。今後、どういうかかわり方や家族の在り方を目指していけばいいのか。
こうした問いに答えることは、多くの人にとって差し迫った課題となっている。本書はその問題に、二十一のケースを通して答えていきたいと思う。そして、あなた自身が直面している問題の本質を知り、必要な対処をとるためのヒントを提供できればと思う。
その答えの向こうには、現代人がたどり着こうとしている新たな家族の姿が浮かび上がってくるだろう。

なお、本書には多くの事例が登場するが、有名人のケースについては公刊されている文献に基づいて記述を行った。できるだけ複数の文献に当たり、客観性を確保するように努めたが、単一の文献に基づく記載も含まれている。また、一般人の事例は、実際のケースをヒントに再構成したものであり、登場する人物の名は仮名であり、特定の事例とは無関係であることをお断りしておく。

(「はじめに」より)

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著者

岡田尊司

1960年香川県生まれ。精神科医、作家。医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。京都大学大学院医学研究科修了。長年京都医療少年院に勤務した後、2013年に岡田クリニック開業。現在、同病院院長。

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