単行本 - 人文書
100点到達! ひろがりつづける<河出ブックス>の宇宙
2017.01.24
2009年10月に創刊した<河出ブックス>は、おかげさまをもちまして、刊行点数100点に到達いたしました。創刊当初より「つながる教養」ということを意識し、1冊の河出ブックスを手にした好奇心がまた次の1冊の読書へと連鎖していく。そのイメージをこれからも大切にしていきたいと考えています。No.100は佐藤卓己さんによる強力な一冊です。ぜひご注目ください。(河出ブックス編集長 藤﨑寛之)
佐藤卓己『青年の主張――まなざしのメディア史』
毎年「成人の日」に放送された、あの国民的番組を覚えているか!? 1950年代から大衆的感性を鏡のように映し続けた弁論イベントの、戦後日本社会における機能を問う画期的メディア史。
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《100点刊行記念企画》石原千秋さん、大澤真幸さん、永江朗さんが推薦する河出ブックスベスト3
■石原千秋さんが選ぶ、河出ブックスの3冊
① 橋本健二『格差の戦後史――階級社会 日本の履歴書【増補新版】』
「正確なデータを元に、格差は1980年代からすでに始まっていたと説く。格差は高度資本主義に構造的に組み込まれている! 冷静な議論のための必読書。」
② 若林幹夫『未来の社会学』
「「未来」は時間ではなく、近代を成立させるためにバラバラの物語を一つにまとめ上げる進歩主義的な「装置」だと言う。なんと根源的な問いだろうか。」
③ 長山靖生『「世代」の正体――なぜ日本人は世代論が好きなのか』
「「世代」が問題として浮上するのは、過去と未来がせめぎ合うときだ。それを整理しながら、パラダイムチェンジを浮かび上がらせるみごとな手腕!
[いしはら・ちあき]1955年生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授(日本近代文学)。河出ブックスでは記念すべき第1号『読者はどこにいるのか』を執筆。
■大澤真幸さんが選ぶ、河出ブックスの3冊
① 北河大次郎『近代都市パリの誕生――鉄道・メトロ時代の熱狂』
「本書に書かれた19世紀パリの都市改造の具体相から、私たちは、「近代」とは何かを知ることができる。志の大きな研究である。」(第32回サントリー学芸賞、第36回交通図書賞)
② 浅野智彦『「若者」とは誰か――アイデンティティの30年【増補新版】』
「社会学の実証研究として模範的。私たちが漠然と感じている若者の変化、アイデンティティの多元化という印象が、まぎれもない事実であることが明らかになる。」
③ 長谷部恭男『法とは何か――法思想史入門【増補新版】』
「この国の憲法学をリードする著者による、法思想・法哲学の歴史の非常にバランスのとれたテクスト。憲法についての思索がどれだけ深い哲学に裏打ちされているかがわかる。」
[おおさわ・まさち]1958年生まれ。社会学者。河出ブックスに『生きるための自由論』、『思考術』(→河出文庫『考えるということ』、『いま、〈日本〉を考えるということ』(共著)がある。
■永江朗さんが選ぶ、河出ブックスの3冊
① 小池昌代/塚本由晴『建築と言葉――日常を設計するまなざし』
「詩人と建築家による刺激的な対話。〈ふるまい〉を観察して、世界の中に定着させた瞬間、建築が生まれる。」
② テリー・イーグルトン(大橋洋一/吉岡範武訳)『アメリカ的、イギリス的』
「私はこの本で、批評というものは皮肉のセンスとユーモアのセンスが必要だということを学んだ。」
③ スラヴォイ・ジジェク(鈴木晶訳)『事件!――哲学とは何か』
「〈事件〉をキーワードに大量の映画を参照しつつ現代を問い続ける思想。哲学は言葉と概念の曲芸のなかにある。」
[ながえ・あきら]1958年生まれ。フリーライター。「哲学からアダルトビデオまで」幅広い分野で執筆。河出ブックスに『誰がタブーをつくるのか?』がある。
■編集長が選ぶ、河出ブックスの3冊
※今回推薦コメントをいただいたお三方の河出ブックスはどれもおすすめなのですが、ここでは除外させていただき、特に思い出深い3冊を挙げることにします。
① 紅野謙介『検閲と文学――1920年代の攻防』
「創刊当初から、歴史を新たな角度から問い直しつつ、読み物としても面白い企画を柱にしたいと考えていましたが、その雛形といえる一冊です。」(第18回やまなし文学賞)
② 長山靖生『日本SF精神史――幕末・明治から戦後まで』
「早々と脱稿していただきながら、真価が問われる創刊第2弾にとお願いした一冊。第31回日本SF大賞と第41回星雲賞をダブル受賞。シリーズに箔をつけていただきました。」
③ 小熊英二編著『平成史【増補新版】』
「ただのコンセプト勝ちの本ではありません。研究会を重ね、互いの原稿を批判的に読み合いながら結実した一冊。大学のゼミのようなあの日々が懐かしい。」
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