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【朝日新聞書評で話題】「それって合法? 非合法?」松戸駅前で出会ったふたりの、恋でも愛でもない連帯──『うた子と獅子男』無料公開

【朝日新聞書評で話題】「それって合法? 非合法?」松戸駅前で出会ったふたりの、恋でも愛でもない連帯──『うた子と獅子男』無料公開

寡作ながら、新作を出すたび世間の「常識」のはざまを鋭く突き、『リリース』『神前酔狂宴』『フィールダー』など数々の衝撃作で文学賞を総なめにしてきた古谷田奈月

最新作うた子と獅子男は、安居酒屋で働く190センチ超の大男・獅子男と、人生を持て余した困窮高校生のうた子の出会いから物語がはじまります。

「それって合法? 非合法?」

自分たちのルールを作り、社会に擬態して生きる若者たちのサバイバル青春長編より、冒頭17ページを特別公開いたします!

 

古谷田奈月『うた子と獅子男

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1

 

 うた子がからのビールジョッキを右手に五つ、左手にも五つ持ってレジカウンターの前を過ぎようとしたとき、「クソッ」と小さなののしりが聞こえた。カウンター内で伝票をめくっていた店長が誰でもいいから手頃な誰かに、この場合はつまりうた子に、いら立ちをぶつけようとする声だった。

「やられた。三十七卓のガキどもだ。会計しないで帰りやがった」

 その瞬間、胸の中で何かがぐるぐるうごめきだすのをうた子は感じた。勤めだしてふた月の、うた子はしがないアルバイトである。通りがかりの偶然とはいえ店長からそれほど深刻な話題を振られたのは初めてのことで、応答の仕方はわからない。何しろこの店長から普段言われることといえば、挨拶をしろ、笑顔を見せろ、敬語を使え、一人でも多く客を呼べ、一杯でも多く注文を取れということだけである。それでも不意に持ち上がったこの事件に対して、何かできることがある気がした。うごめく何かがそう言っていた。うた子の番が来たのだ。

 その確信にあおられ、ジョッキをガチャガチャいわせながらうた子は進んだ。パントリーに駆け込み、グラス専用の洗い場にジョッキをどんと置くなりあげた声が、おのずと張り上げるようになる。

獅子男ししおさん、食い逃げは合法?」

 ジントニック、モスコミュール、ファジーネーブルにレッドアイと次々カクテルを作り出している獅子男は、小さなプリンターが休みなく吐き出し続けるオーダー伝票の川からちらりとも目を離さぬまま、「食い逃げぇ?」と心ここにあらずの声を出した。ドリンク専用のキッチンであるパントリーには、動けるスペースがわずか二畳ほどしかない。二メートル近くも身長のある獅子男の巨体を押し込んでおくには狭すぎたが、週末の怒濤どとうのドリンクオーダーをさばけるのは今のところ獅子男しかいないのだった。

「この団体客、絶対にメニューの端から順に頼んでる」獅子男は独り言のような愚痴をこぼしてから、「食い逃げが合法か、非合法か?」

「うん」

「今忙しいから、なぞなぞならあとで答える。本気で聞いてるなら今答える」

「本気で聞いてる」

 すると獅子男と背中合わせに立つ、コックコート姿の市太いちたがふんと笑った。厨房ちゅうぼうからいっとき助っ人に来たらしい、うた子が持ち帰ったビールジョッキを次々とグラスウォッシャーに突っ込んでいる。「本気で聞くなよ」

「いや、いいよ」獅子男はオーダー伝票の川を途中でぷつりと切り取ると、作り上げた飲み物とともにそれを前方の台へと押し出した。「食い逃げは、もちろん、非合法だ」

「というか違法だ」市太がすかさず口を挟む。「非合法じゃない。違法だよ」

「話をややこしくするな。質問はこうだぞ。食い逃げは合法か、非合法か?」

「食い逃げは違法で、犯罪。これのどこがややこしい?」

「非合法、非合法」次のオーダーに着手しながら、獅子男は声を大きくして市太の言葉を塗りこめた。「食い逃げは、うた子、非合法!」

 そこでようやく獅子男がうた子に目をやったのは、そもそもの質問の意図が気になったためだったが、目が合ったのは一瞬だった。胡桃くるみ色の虹彩が、輝いたと思ったら消えていた。

 頭だけパントリーに突っ込んでいたのを素早く引っ込めたうた子は、自分を呼ぶ獅子男のどこか不安げな声が、キッチンスタッフの「お願いしまあす!」という大音声にかき消されたことにも気付かず走り出した。デシャップ台に出されたチヂミの前を過ぎ、煙草の煙の立ち込める休憩室の横も過ぎて、従業員用出入り口から外へ飛び出す。

〝三十七卓のガキども〟を、うた子ははっきり覚えていた。ガキといってもうた子よりは年上で、どもといっても二人である。たぶんあれは大学生、どちらもややかっちりとした、上品といってもいいような身なりで、ビールのあとに角瓶を入れてハイボールなんか飲んでいた。これは、うた子が新人ながら厚いシフトで見出していた経験則──若い男はビールのあと九割がた焼酎に流れ、示し合わせたかのように生レモンサワーか生グレープフルーツサワーを頼む──に反する動きだった。そしてさらに印象的で、うた子の心に残っていたのは、料理や飲み物を持っていくと必ず「ありがとう」と笑いかけてきたことである。そういう客は珍しい。少なくとも〈宵吉よいきち〉では。〈宵吉〉にはテーブルが百以上もあったが、だから食い逃げ犯たちの姿はうた子の脳裏にしっかり刻み込まれていた。

 六階から五階までは一段飛ばし、四階までは二段飛ばし、三階までは三段飛ばし、最後はほとんど上から下まで一気に飛ぶようにしてうた子は階段を駆け下り、その勢いのまま雑居ビルを飛び出した。

 松戸西口駅前の、金曜の夜である。西暦二〇〇〇年という〝未来〟に全世界が突入してから早くも五年以上が過ぎたが、街は前世紀的な風景を保っている。すなわち、酔っぱらいの怒号、タクシーが起こす風、居酒屋とキャバクラとコンビニと牛丼屋がふりまく光──その中を、うた子は大股に駆けていった。足が迷わず繰り出されるのが、うれしい。自分まで風になったようだ。胸が高鳴り、どんどん走った。

 十時前。大学生が帰るには早いと考え、東口と繋がる連絡通路へ向かった。あちら側に何軒かあるゲームセンターのいずれかが怪しいという推理である。

 いつ来ても寂れた感じのするその屋根付きの通路を抜けたところで、はたして、うた子は目当ての二人を発見した。そのうちの一人が着ている場違いにフォーマルなジャケットは夜空と同じ色をしていたが、西口のとよく似た街明かりの中ではかえって目を引いた。うた子はそれをゴール旗に見立ててラストスパートをかけ、真っ赤なワイシャツに黒いミニスカート、人工芝のごとく明るい緑色のエプロンという自分の制服姿のほうがよほど目立つということなど考えもせず、一直線に猛進した。うた子の頭にあったのは合法の確信と、それがもたらす喜びだけだった。

 まったくのところ、獅子男のお墨付きほど頼もしいものはなかった。うた子の頭脳は学校の試験を物差しとするなら平均三十点という水準だが、もちろん、食い逃げが合法か非合法かくらいは察しがつく。それでも尋ねにいったのは、この確信を得るためだった。認証機関による品質保証が消費者を安心させるように、獅子男による合法認定がうた子を安心させるのだ。

 そして、今のうた子は合法なのだった。食い逃げが非合法である以上、それを許すまいとする行動のすべてが合法であるはずなのだった。こうして犯人を追うことも、さらに、ジャケットを着た背中に思いきり体当たりを食らわせることも。

 うた子にうしろから突き飛ばされた男は、驚きとうめきとを喉に詰まらせながら勢いよく前につんのめった。なんとか転びはしなかったが、地面につきかけた彼の手をうた子は素早くつかみ、腕ごときつく抱きかかえた。男は反射的にもがき、怯(おび)えた顔をこちらに向けた。

「あの。お代が、まだみたいで」

 うた子が告げると、男は息を吞んだ。うた子が着ている制服とそのシャツに縫い付けられた〈宵吉〉のロゴに、ようやく気付いたようだった。

「嘘だろ」うた子はそれを自分に向けられた言葉だと思ったが、「おい、くそっ、てめえ覚えとけよ!」と続いた声は、走り去っていく仲間の背中に向けられていた。そうしているあいだも腕を振りほどこうともがいていた男は、しかしうた子のかたくなさと自らのりきみに振り回されてよろめき、したたかに尻もちをついた。巻き添えを食い、うた子も転ぶ。初めてまともに目と目が合う。食い逃げ犯の瞳はまるでクリスマスツリーのオーナメントのような銀色である。驚きと、放心の一拍──そののち、男は声をあげて笑い出した。

 つられてうた子も一緒に笑った。それこそクリスマスのような、食い逃げ犯の祝祭めいた笑い声が耳に快かった。酔ってるんだ。そう思い、さらに気分がよくなる。きっとすごく、すごく酔ってる、二人で一本空けたんだから──十六歳にして、うた子は酒が好きである。自分で飲んだことはなくとも、酔っぱらいを作るものだと思えばなんでも美酒に感じた。できることなら、誰もが常に酒に酔っていてほしい。うた子がそう願うのは、それでようやく人との釣り合いが取れると感じるからだった。

 そしてこのとき、まさにその均衡を感じ、うた子は食い逃げ犯の腕をさらにきつく抱きしめた。あらためて彼と目を合わせ、あらためて笑った。

 捕り物劇は東口で一番大きなゲームセンターの前、店内から往来に流れ出す白い光の中で繰り広げられ、人目を集めていたが、二人が笑い出したところで終幕の雰囲気になった。知り合い同士のおふざけと見なされたようで、立ち上がり、並んで歩き出したときには、もう誰もうた子たちを気にしていなかった。

「こんなことするつもりなかったんだ」

 うた子に連れられておとなしく連絡通路を歩きながら、食い逃げ犯は本当に友だちみたいに話しだした。

「最初から逃げる気だったらボトルなんか頼まなかったし、料理だって、もっとたくさん頼んだよ。ちょっとしたことだったんだ、ほんとに……、おれたちが会計しようとしたらちょうど団体の客が、来たんだか帰るんだか、出入り口のとこで大騒ぎしてて、全然レジのほうへ近付けなくてさ。それでもう、いつまでも待たされるのにうんざりしちゃって……」

 うん、うん、とうた子はにこやかに相槌あいづちを打った。熱心に聞いてはいなかったが、合法で、それゆえ少しも不自然なところのなかった自分の一連の行為について思うと、笑顔にならずにいられなかった。うた子が世間に馴染(な じ)めていることを証明してくれた酔っぱらいの食い逃げ犯は、今やうた子の宝物だった。

 その宝物が銀色の目でうた子を見つめ、酒臭い声でささやいた。「かわいいね。高校生?」

「うん」

「あの、これナンパじゃないからね。ただ、ほんとにかわいいから」

「うん」

「かわいいっていうか、すごくきれいだ。言われない? きれいだって」

「うん」

「言われる?」

「言われる」

「言われるか」食い逃げ犯は笑った。「そうだよね。だってほんとにきれいだもん。吸い込まれそうな目って、こういうのを言うんだな。さっきさ、妖精が追っかけてきたかと思ったよ。ほんと、ほんとに、めちゃくちゃきれい。ねえ、こんな状況でこんなこと、馬鹿みたいだと思うだろうけど……、ありだと思う? なんていうか、こういう出会いも。運命っていうか、なんかおれたち、合いそうだなって気がするんだけど──」

「うん」

「え、そう思う?」

「うん」

「ほんと?」

「うん」

「え、え、ほんとに?」

「うん」

 うた子は笑ってうなずいた。話すときは相手に合わせる。うた子の基本方針である。何しろ同意し、肯定していれば、相手は穏やかでいてくれる。場の雰囲気も保たれる。うた子も普通の人らしくいられる。

 名前は、家は、学校はと続く質問に答えているうちに、〈宵吉〉の入った雑居ビルに到着した。食い逃げ犯を連れてエレベーターに乗り込むと、ホームに戻ったという安堵あんどとともに、やり遂げたことの大きさが実感になってうた子の胸を満たしていった。この功績を、早く獅子男に知らせたい。階数表示板を見上げる顔の動きが、心と揃った。

「うたちゃんていうのか」食い逃げ犯はだらしなくよろめき、酒の匂いを振りまきながら言った。「名前までかわいいんだね」

 うた子は笑みを浮かべたが、相手の顔は見なかった。大事な最終盤である。気を引き締めなければならない。〈宵吉〉のある六階に着くまでに、あるいは獅子男に手柄を認めてもらうまでに発生しうるハプニングの中で最悪なのは、言うまでもなく逃げられることだ。扉が開いた瞬間に突き飛ばされるかもしれない。そのまま走り去られるかもしれない。そう考えると心配で、〈2〉から〈3〉へ、〈3〉から〈4〉へと移り変わる数字の光を見上げたまま、うた子は犯人の腕をより強く抱いた。

 すると男がふと笑った。首をかしげ、うた子の顔を覗き込む。

「おっぱいが、ひじに当たってる」

〈5〉がオレンジ色にともった。エレベーターに乗り込んでから初めて目を向けた食い逃げ犯の顔には、一緒に転んで大笑いしたときにはなかった毒々しさがあり、見ているとまるでこちらもその色に染められていくかのようだった。

 とはいえ、うた子は別に、自分のおっぱいが誰のどこに当たろうと構わないのである。そんなことを気にするくらいならほこりを目で追っているほうがましで、うれしいと思う者がいるなら勝手にうれしがっていればよいと思う。しかし「きれい」とか「妖精のよう」といった評価と同じようにはあしらえないのは、おっぱいが肉体であるためだった。

 獅子男はうた子が体を放任することを嫌う。身を守れ、非合法を許すなというのだ。そしてうた子は獅子男の嫌うことを嫌う。そもそもこうして食い逃げ犯を連れ帰っているのは、合法な務めを立派に果たしたと獅子男に知ってもらうためである。非合法の犠牲になったおっぱいではなく、食い逃げという非合法を許さなかった、この正しさをこそ見てもらうためである。

 うた子は再び階数表示板を見上げた。〈5〉から〈6〉へとその光が移る前に自分がしようとしていることが、合法かどうかは考えなかった。うた子のおっぱいを無断で楽しむのは、非合法。その確信でじゅうぶんだった。非合法、非合法──出がけに獅子男もそう言っていた──非合法! それに基本となる型も、相手から適度に距離を取る、鼻めがけて正拳を打ち込む、左手は反撃にそなえて自分の顔のそばに構えるといった注意点もすべて獅子男からの教えだったのだから、全身に合法を宿らせたようなものだ。

 相手にとって、それがどれほど予想外だったかはわからない。反撃どころではなかったのは確かだ。食い逃げ犯が呻き、手で鼻を押さえ、壁に勢いよく背中をぶつけたところでエレベーターは六階に着いた。

 扉が開く直前、店長の声がうっすら聞こえた。

「戻れって。誰がパントリー回すんだよ」

「いや、でもやっぱり捜さないと。あいつたぶん──」

 店長に答える獅子男の声はエレベーターの扉が開くにつれ明瞭になっていったが、開ききったところで途切れた。うた子は再びしっかり食い逃げ犯の腕を抱き、二人と向き合った。どちらも黙ってこちらを見ている。自分たちが目にしているものが意味するところを、急いで解明しているようだった。

「捕まえたのか!」

 長い一瞬ののち、店長が大声を出した。年配の女性客に人気の、古風に端正な顔が笑っていた。「猟犬みたいな奴だな!」

 獅子男はまだ呆然としていた。鼻を押さえ、うた子に支えられてようやく立っている男をただ見ている。うた子はその目がこちらを向き、「ようし」と笑いかけてくれるのを待ったが、もう少し時間がかかりそうだった。

「どうも。またのご来店、うれしいねえ」

 うた子とともにエレベーターから降りてきた食い逃げ犯に、店長は優しく声をかけた。しかし首根っこを掴み、自分のほうへ引き寄せる手つきは荒く、うた子はもう彼の腕を抱いていられなくなる。その瞬間──しかと抱いた骨肉を当然のように奪われ、胸が空き、そこへ抜け目なく寒風が吹きこんだ瞬間──出し抜けに、期待していたことは何一つ起こらないだろうとうた子は悟った。

「警察呼んどきます」獅子男が言うと、

「勘弁してやれよ」と店長は従業員用出入り口のほうへと食い逃げ犯を引っ立てながら、顔だけ振り返って笑った。「まだ子どもだ。かわいそうだろ。あとはやっとくから店頼む。うた子はもう上がっていいぞ、十時過ぎたろ。お疲れさん」

 獅子男は子ども・・・を引きずっていく店長の背中を、温感のない、目が合っていない状態で店長を見るとき特有の面持ちで見送った。重いドアの向こうに二人が消えるとようやく、その顔をうた子へと向けたが、視線はうた子の右手にそそがれていた。

 食い逃げ犯の鼻の骨との衝突によってできた傷がそこにはあった。見た目はほんのかすり傷で、痛みのほうがよほど大きい。にもかかわらず、獅子男にそうして注視されるまでうた子は痛みに気付かなかった。確かに感じていたはずが、水越しに聞こえる音のように遠くとらえていたのだった。

 うた子は今さら手を隠し、上目遣いに獅子男を見た。浅黒く角ばったその顔が「ようし」と笑ってくれることは、今日はどうやらなさそうである。こちらを見るのはまっすぐな、非合法かそれに近いことをしたうた子を見るとき特有の目で、叱責しっせきか、合法な振る舞いについての講釈が今にも始まりそうだった。

 再びエレベーターの扉が開き、数名の客が降りてきた。すでにどこかで飲んできたようで、一方通行のわめき合いを楽しみながらどやどやと入店していく。すると彼らが開けた自動ドアから店内の酩酊めいてい気分がもわりと外へ流れ出し、エレベーターわきで立ち尽くしているうた子と獅子男のもとまで届いた──新たな酔客を迎える仕事仲間たちの、こちらもまた騒がしい挨拶、こだわりのかけらもない有線放送、百に及ぶ酒席の賑わい。金曜の夜は続いていた。そしてまだまだ終わりそうもなかった。

 期待とは違う結末を迎えかけていたうた子の今夜が、ぬるかんの温度で持ち直し始めた。あらためて獅子男を見上げ、従うための言葉を待つ。酔った世界はうた子の家、獅子男の言葉は道なのだ。それさえあれば自信が持てる。体が動く。明日へ向かえる。

 それに、きっとまた来る──そうも思えた。きっとまた、うた子の番が来る。

 

 

==続きは『うた子と獅子男』でお楽しみください。==

 

古谷田奈月『うた子と獅子男

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著者

古谷田奈月(こやた・なつき)

1981年、千葉県我孫子市生まれ。2013年「今年の贈り物」で第25回日本ファンタジーノベル大賞を受賞、『星の民のクリスマス』と改題し刊行。17年、『リリース』で第34回織田作之助賞受賞、18年「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞受賞。19年、『神前酔狂宴』で第41回野間文芸新人賞受賞。23年、『フィールダー』で第8回渡辺淳一文学賞を受賞。他の著書に『ジュンのための6つの小曲』『望むのは』がある。

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