単行本 - 日本文学

Web河出で大反響だったあの連載に、9話の書き下ろしを加え、待望の単行本化!――山崎ナオコーラ『母ではなくて、親になる』

37歳で第一子を産んだ山崎ナオコーラさんが、妊活から子供が1歳になるまでを綴ったエッセイ集を刊行しました。

「自然分娩をしてこそ、母親」など、“自然”や“普通”や“常識”と様々なレッテルが貼られて、追い詰められがちな出産・子育て。

さて“母親”ではなく“親”の目で、出産・子育てを見てみると、どんな世界が見えてくるでしょう。

 

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『母ではなくて、親になる』は、Web河出で連載していたもので、連載時より大きな反響がありました。「読むと気持ちが楽になる」「子供を産むのが怖くなくなった」と、男女問わず、また育児に関係ない方からも感想をいただき、びっくり。

 

毎回、まっすぐ自分のことを語る赤裸々な内容に、「こんなエピソード、発表していいの!」とドキドキすることが何度もありました。

 

流産した時、夫に先に泣かれてむっとしたこと。子供が生まれた時、他の子より体が大きくて心配になったこと。山崎さんは自分の心の動きを見つめ、どうしてむっとしたのか、どうして心配になったのか、を自問しながら、自分の中にいつの間にか居座っている “思い込み”を洗い出していきます。

 

それは同時に、“自然”や“普通”や“常識”というレッテルを剝がしていく過程でもあります。レッテルは、心にこそ、貼り付けられているものなのだということを、このエッセイを通して、改めて痛感しました。

 

というのも、毎回上がってくる原稿を読む度、“こういうふうに考えることもできるのか!”という発見に、心が自由になるのを感じたからです

 

当初、私は出産経験がないので、担当しているとわからないことも出てくるだろうなと、漠然と不安に思っていました。

 

ところが山崎さんは、自分の経験をこれほどまでに率直に語りながらも、経験がすべてだとは言いません。

 

「子どもの心に寄り添えるのは育児経験の有無に関係がない。子どものいない子ども好きの友人の方が、私よりもずっと子どもの心を想像している。」

 

これは「同じ経験をしていない人とも喋りたい」の一文。

“子どもがいないと、子どものことはわからない”と、いつの間にか信じ込んで、そのことに疑問を持ったことさえない自分に気づき、はっとしました。

 

妊娠や育児にかかわる“思い込み”は、それを経験したことがあるかどうかとは関係なく、どんな人の心の中にもあるのです。

 

そしてこの本は、自分自身の“思い込み”によって、いつの間にか生きづらくなっている状態から解き放ってくれる、痛快な本です。

 

ぜひ「同じ経験をしていない人」も読んでみてください。

 

(編集部・R)

 

 

 

 

 

 

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