単行本 - 日本文学

心揺さぶる、最高のデビュー作! 家族や親友や恋人より大切な「運命」の物語。――石田香織『きょうの日は、さようなら』

本作を最初に読んだのは昨年の夏だった。八十枚ほどのA4用紙にプリントアウトされたその中篇小説の書き手については何も知らなかった。

編集部では年間で数百本の小説原稿に触れる。もちろん活字になる前のものだ。そうしたなかでひときわ惹き込まれたのが本作だった。一気に読んでしまった。

 

主人公のキョウコは小学二年生になった夏、父が再婚する。再婚相手のスミレさんはキョウコの一歳年上の男の子を連れていた――それがキョウスケとの出会いだ。母を亡くして以来独りの時間が多かったキョウコにとって、家族四人で過ごす時間は、日々の些細なことでも美しく、かけがえのないものだった。しかし幸せな時間は長くは続かない。ある朝突然スミレさんはいなくなり、そして独り残されたキョウスケも、キョウコの前から姿を消す。

キョウスケとの再会は十数年後。父の元を離れ、職場近くのマンション「キャッスル城田」で一人暮らしを始めたキョウコのもとに、「あかんたれ」となった義兄が突然現れる……。

新開地を思わせる神戸の街で、再会した兄妹と周囲の人々の孤独で不器用な生きざまが愛おしい。ちょっとした登場人物ですら活き活きと描かれ、この街に行ってみたいと思わせるのだ。

 

悲しみも喜びも、孤独も繋がりも、これ以上ない強さで伝わる、たくさんの感情が詰まったこの小説にふさわしい装幀のために、カバー画のイラストコンペを、デザイナーの鈴木成一さんとともに行った。80作品ほどの応募があり、ほんとうに様々な絵が集まった。そこから選ばれた絵が今回の装画となったおぎわら朋弥さんの作品だった。表は波止場にたたずむ二人の男女。これはカバー全体で一枚の絵となっている。裏には帯をとると猫がいる。ぜひ書店店頭で手に取っていただきたいと思っています。

(編集部T)

きょうの日 © おぎわら朋弥

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