単行本 - 日本文学

奴隷国だ! 「にっほん」には奴隷しかいない!  ーー笙野頼子『ウラミズモ奴隷選挙』発売迫る!!

奴隷国だ! 「にっほん」には選挙権のある奴隷しかいない!
2003年『水晶内制度』、2006年「だいにっほん」シリーズ、2016年『ひょうすべの国』――その予見性で現代世界文学読者を戦慄させ、とうとうカサンドラと呼ばれてしまった作家・笙野頼子が、前作を超えて更なる追撃へ!
日本奴隷制社会への最も過激な告発の書、『ウラミズモ奴隷選挙』がまもなく刊行!!

 

 

【内容紹介】
  時はTPP批准、高プロ法成立、水道法の改悪から約半世紀後、舞台は世界企業の植民地となった奴隷国「にっほん」。そこは世界銀行に住む妖怪ひょうすべと、その手下にして政権与党「知と感性の野党労働者同盟(略称・知感野労)」、その党員ジュニアで構成される「NPOひょうげんがすべて(略称・ひょうすべ)」に支配されていた。女性も時にその手下となり、ひょうすべの婦人部である、「野党リベラルフェミニズム、手をつなごう男とだけ(略称・ヤリテ)」に加入して偽のフェミニズムである、イカフェミニズムで同性を苦しめていた。
 かつては世界一豊かだった国、しかし愚かにもTPP批准で国家主権を失った。そのジェンダーギャップも114位からさらに底辺へ。性暴力、経済暴力、差別暴力が支配原理となり、男尊化と植民地化はとどまるところを知らぬ。少女は遊郭に送られ、農地は核廃棄物の置き場にされ、痴漢とヘイトスピーチを警察が守り、国民の75パーセントは債務の奴隷。井戸は埋め立てられ水道代は五倍、払えぬ人々は川の水を汲んで逮捕される。女性は幼女妊婦までも滅亡の危機に……。ならば? 死ぬしかないのか?

 

 逃れよう、隣国へ! 方法は二通り。
 ひとつは自力での移民や亡命、もうひとつは隣国ウラミズモへの帰属を決定する投票、奴隷選挙である。もしこの奴隷選挙に勝てばその選挙区はにっほんから離脱できる。ただしこれらで救われるのは、実は女人だけ。というのもこのウラミズはまさに女人国で、……。
 旧茨城県を領土として、不意に出現した歴史浅き国。ここには危険施設の引き受けを独立条件とした黒歴史がある。しかし今では……。
 TPP不参加のゆえに水と食べ物に恵まれ、国家主権は保たれ、老後も医療も無事。子供は外国の精子を買ってシングルマザーかダブルマザー(夫婦ならぬ婦婦)で産む。女性移民も受け入れ、人口は増えていた。むろんユートピアではない。監視カメラだらけの警察国家である。三百年後の男女平等を目指すと称し、男性の人権を制限していた。まず、国境からの男性侵入者を射殺、にっほんが後始末を押し付けてくる痴漢強姦犯は、国家施設「男性保護牧場」で見世物にし、その他には美男奴隷を観光資源にしている……。

 

 ああ、にっほんは地獄、でも民主主義のない国ウラミズモは??

 

 さて、あなたならどちらに住みますか

 

 そういいながらここの女性たちは独特の笑い方で、

「はははははははは、はっ」。
「はははははははは、はっ」。

 おいでよ女人国へ、ようこそウラミズモへ

 

【あらすじ】
 にっほんで側室奴隷の子として生まれた有名女権論者の末裔かもしれぬ、勇猛果敢で働き者の市川房代は、成人するまで奴隷であることを知らずに育ち、ウラミズモに移民、総理にその人間性と忠誠心を認められて、男性保護牧場歴史資料館の最高責任者に抜擢された。館内で「保護」する性犯罪者たちの生死を委ねられる激務の日々。すべての請願、要求が房代に集中する。
 警視総監、法務大臣を輩出する白梅高等学院の少女たちに銃で脅され、にっほんの少女遊郭から訴えをきき、死者からのメールに耐える毎日、齢数千年の石の女神までも市川を探し求める。
 そして今年もまた、最も凶悪な牧場男性の「未来を決定する」日が近づいてきた。

 

 

【主な登場人物】
市川房代……にっほんで側室奴隷の子として生まれ、成人まで自分を市民と信じていた。ウラミズモへ移民後若くして保護牧場を任される。総理直属なので教授と呼ぶ人もいるが、実は学芸員でもなく正規職員でもない。

猫沼きぬ……ウラミズモが占領したS倉にある白梅高等学院三回生。級長で保安委員、銃を携帯する。鉄パイプで武装した「散策部」のリーダー、元子供服のモデル、母親は国一番のジェンダーフリーデザイナー。本人は国一番の美少女だが化粧でわざと三の線を出している。特技パンの丸呑み。

双尾銀鈴……きぬの親友、腹臣。中等学院でにっほんに半年留学し性暴力を受けてからは自己崩壊ぎみ。父親(精子提供者)はアイルランド系の詩人、祖母は白梅の創立貢献者。昔は王子のように可愛かったが今はすべてに自信を失っている。きぬと協力して、もっとも凶悪な児童虐待殺人犯(チャイ君)の処刑に向かっていく。

姫宮……謎の?存在。戸籍なし、国民でもない、ずっと生きている――「私が何をしたというのでしょう、ただもう、女の形に生まれた、しかしそんなのなんでもない自然の、普通の事ですよ、(中略)生まれついたからだに何の罪もないのに」

北名一策……痴漢展示室に「出演」している生体。時々泣き出して止まらなくなる。

痴漢展示室担当官……男性以上の筋力を発揮する男性装置を装備、北名一策を「指導」している。自分の官服を黒の素敵なのにして欲しいと思っている。

湯浅芳野、吉屋伸江、奥梅子……男性保護牧場歴史資料館のガイド

P田のバブミ……奴隷少女。坊ちゃまに虐められ、悪人に脅され、パンツを取られても、万難を排して母親と奴隷選挙の投票所へたどり着く、その結果は? 勝利か、永遠の隷属か……。

 

 

【作者より】
 本作は一応、「だいにっほん」シリーズ、『水晶内制度』のスピンオフで、『ひょうすべの国』の続篇ともなっています。しかし、現代の日本のあり方に心を痛める方、文章を愛する方にならば、おそらくは初読みでも十分楽しめます。ただ、教科書的な文章や、マスコミ報道に、疑問を感じない方には苦痛かもしれません。
『ひょうすべの国』でもずっとTPPの危険性を訴えてきました。今はもう離脱(脱退)あるのみと思っていますす。巻末にはデモ参加の報告や議員に出したメールや、内閣府TPP説明会参加の体験を生かした小説も収録してあります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 国を売るな! 国益渡すな! 民よ死ぬな! 奴隷になるな!

 

 ――番最後に次作の予告篇がついております。

 

笙野頼子

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著者

笙野頼子

1956年生まれ。81年「極楽」で群像新人賞を受賞。「なにもしてない」で野間文芸新人賞、「二百回忌」で三島賞、「タイムスリップ・コンビナート」で芥川賞、「幽界森娘異聞」で泉鏡花賞、「金毘羅」で伊藤整文学賞を受賞。

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