
単行本 - 日本文学
奇才はよみがえる! 澁澤龍彦没後30年記念企画、続々刊行
2017.07.28
澁澤さんは1987年8月5日に亡くなられました。それから30年のあいだに、私たちは澁澤龍彦全集と澁澤龍彦翻訳全集をはじめ、数多くの澁澤文庫も刊行してまいりました。文庫はすでに68点に上ります。また、マルキド・サドの翻訳文庫8点と、『さかしま』などの翻訳文庫も入れると、80点を超える膨大な作品群になります。
澁澤龍彦没後30年にあたって、弊社としましては、さまざまな企画や販売促進を行っております。弊社の願いは、新しい読者、若い読者に、澁澤作品を読んでほしいというものです。澁澤ブームは没後しばらくして、再評価とともに大きな盛り上がりを見せました。しかし今回はその当時とは読者が違っています。例えば男性読者が中心の硬質なイメージだった澁澤さんも、今は女性が別の価値観から読む時代になっています。
私たちはまず、『別冊文藝 澁澤龍彦ふたたび』(5月刊)の刊行から始めました。
平野啓一郎、ヤマザキマリ、山崎ナオコーラ、嶽本野ばら、市川春子、三原ミツカズ、滝本誠などのエッセイに、主要著作ガイドを付した、今現在に必読の澁澤入門本です。
つぎに、澁澤文庫『極楽鳥とカタツムリ』(7月初旬刊)を刊行しました。
これは、弊社編集部が澁澤さんのエッセイから「動物の博物館」というテーマで選んだ究極のオリジナル・アンソロジーです。獏や犀から、鳥、魚、貝、昆虫まで、動物をめぐる奇妙な物語を集めた澁澤エッセンスです。『高丘親王航海記』からの2篇を含め、眩暈を覚えるような珠玉の28篇を収録しています。
そしてカバーの装画は、安野モヨコさんの素晴らしい描き下ろしです。今までの澁澤さんのイメージががらりと変わったのではないでしょうか?
澁澤文庫は8月(初旬刊)も続きます。動物博物館だった『極楽鳥とカタツムリ』に対して、植物博物館ともいえる『バビロンの架空園』です。
古代の七不思議の一つ、大都市バビロンにあった巨大建造物「架空庭園」には、あらゆる種類の植物、珍奇な花々が集められ、孔雀や極楽鳥が遊び、滴り落ちる噴水の涼しい水幕を通して、下界の街を見渡す……。植物界の没落貴族たち、植物界のイカロス、薬草と毒草、香料、琥珀、庭園への偏愛など、植物をめぐるユニークな18篇、うち25篇からなる「フローラ逍遥」も収録しています。
もちろん、カバーの装画は安野モヨコさんの描き下ろしで、『極楽鳥とカタツムリ』とはまた一風違った美しい女性が表紙を飾ります。
東雅夫さん編集による『澁澤龍彦玉手匣』(7月下旬刊)は、自分を「アフォリズム型」と称する澁澤さんの神髄を、パラグラフで読むものです。彼が描いた幻想的イメージの宇宙を、アンソロジスト東雅夫の巧妙な手で編む、濃密な「澁澤体験」の入門的一冊となるでしょう。
そして、7月中旬から8月下旬まで、全国の書店60店以上で、澁澤文庫フェアが開かれています。共通帯「奇才はよみがえる」のキャッチコピーで、多くの澁澤文庫が並びます。それに合わせて、在庫が少なかった『エロスの解剖』『神聖受胎』『華やかな食物誌』『ヨーロッパの乳房』の4点を新装版にして刊行しました。すべてボッスの「快楽の園」の場面を切り取って菊池信義さんがデザインした、素晴らしい装丁です。
今年10月7日より、世田谷文学館で「澁澤龍彦 ドラコニアの地平」展が開催されます。新しい若い読者が生み出される年になることを祈って、弊社も力を尽くしていきます。
(編集部M)