単行本 - 日本文学

出会い系サイトで 70人と実際に会って その人に合いそうな 本をすすめまくった 一年間のこと を読んだ人に、 花田菜々子がおすすめしたい9冊

菜々子、33歳。職業、書店員。既婚、ただし別居中──

読めば勇気が湧いてくる、衝撃の実録私小説!

花田菜々子さんのデビュー作、青春実録私小説『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』。多数の共感の声を集め、デビュー作として異例の9刷 37000部を突破、読者の投票でノミネート&投票が決まる第6回ブクログ大賞にもノミネートされています。(投票は10月22日締切)
 
夫に別れを告げ家を飛び出し、宿無し生活を送る主人公の書店員・花田菜々子。仕事もうまく行かず、疲れた毎日を送る中、願うは「もっと知らない世界を知りたい。広い世界に出て、新しい自分になって、元気になりたい」。そんな彼女がふと思い立って登録したのが、出会い系サイト「X」。プロフィール欄に個性を出すため、悩みに悩んで書いた一言は、「今のあなたにぴったりな本を一冊選んでおすすめさせていただきます」–。
「とんでもなく面白い」「続きが早く読みたい! 」「もう映画化とか決定してるんじゃ……?」と話題沸騰の本書のヒットを記念し、書店でのみお配りしていたフリーペーパー【出会い系サイトで 70人と実際に会って その人に合いそうな 本をすすめまくった 一年間のこと を読んだ人に、 花田菜々子がおすすめしたい9冊】を公開します。
読者として花田さんに出会ったみなさんの心に、この9冊がビシっと届きますように。
 
 高石宏輔 (晶文社)
街で知らない女性に修行のように声をかけ続け、コミュニケーション不全だった若者が「ナンパ師」となり、他者と関わることを切り拓いていく実話小説。低俗な感情を互いにむきだしにしたやり取りが多いので、読むのがしんどいが、己の感覚を研ぎ澄まして他者を感じ取る描写が独特で心魅かれた。著者の成長物語としても面白く、「私もこの本のように自分の体験を書いてみたい」という強いトリガーになった。
 
 キオ・スターク/向井和美 訳 (朝日出版社)
街中で知らない人と少しだけ言葉を交わすことの、メリットや楽しさを教えてくれる提案のような本。知らない人に会い続けてきた自分としては「そうそう! そうなんだよ」と共感しかない本だったし、日本の世の中が、知らない人と実際に会うということについて、怖い、エロ目的、ストーカー、事件に巻き込まれるかも、というネガティブな偏見だけを打ち出しすぎているので、それに異を唱えたい気持ちが、この本を読んでむくむくと湧き上がってきた。
 
 内沼晋太郎・綾女欣伸 編著/田中由起子 写真 (朝日出版社)
ソウルの個性的な書店を紹介する本だが、その中で登場するジョン・ジヘさんという方が、予約制でお客さんの話を聞き、その人に本を選んであげるという本屋をやっているのを知った。ジヘさんの日本でのイベントに出向き、ジヘさんに自分のことを話してすぐに意気投合した。ソウルに伺ったりしてジヘさんと交流するうち、自分の体験も、人に伝えていくことで誰かの行動を後押しすることがあるかもしれない、と思うようになった。「日本でも誰かが大々的に同じことをやる前に、自分が先に書いておきたい」というよこしまな(笑)気持ちもありました。
 
 能町みね子 (幻冬舎文庫)
交際経験もなく26歳まで処女でいる奥手な女性主人公が、「何とかしなければ」と立ち上がり、出会い系サイトや社内の男性と関わり、迷いながら恋愛やセックスに向き合っていく過程を描いた名作コミック。夫のちんぽが入らなかったりレズ風俗に行くようなわかりやすい過激さがないので目立たないのは仕方ないが、私は10万部くらい売れるべき内容だと思っている。それぞれの「弱い人たち」の心の動きが切実で胸を打つし、13話からの、同僚と言い合いになったあげく、ひとり地下鉄の駅で佇むシーンは、いつ読んでも苦しすぎて泣いてしまう。心理描写が完璧すぎるのだ。
 
 峰なゆか (扶桑社)
打って変わって明るく楽しいコミックエッセイ。毎回公募をして選ばれた男性と峰さんが、レストランで食事をし、初対面の会話のやりとりを楽しむ。独自の観察眼や洞察が面白いのと、何より二人でお互いを探りながら話を進めていくかんじが、実際のXのやりとりの雰囲気に非常に近いと感じたので、「知らない人と二人で会うって、どう会話すればいいの?」という方には併せて読んでみてほしい。
 
 ミランダ・ジュライ/岸本佐知子 訳 (新潮社)
これもまた「見知らぬ他人と出会うこと」がテーマのインタビュー集。ネット中心のこの時代に、いまどきフリーペーパーに「不用品売ります」の広告を出しているという不思議な人たち、ひとりひとりに会いに行き、どんな人なのかを知ろうとする取り組み。わかりやすく加工されていない他者の生の物語はいつもビビッドだったし、それに対峙することは自分を見つめ続けることでもあった、と、自分の体験を振り返っても思う。
 
 永田カビ (イースト・プレス)
自分が「実話モノ」を書くことになってから、やはり近隣の「実話系」のヒット本に何が書かれているのか気になった。永田さんは自分とは考え方も置かれている状況もまったく違うが、いざ書く側になって永田さんのモノローグを読み返すと、本当に辛い状況のなかで、自分を掘り下げ続けて醜悪な部分にもとことん向き合い、闘っているのが伝わった。闘っている人が好きです。
 
 植本一子 (タバブックス)
もともとファンとして一子さんの本は読み続けていたが、縁あって親しくなり、お話させていただくようになった。実話を書く上で実在する人をネガティブに書くことや自分の思いを吐露することなど、最初はためらいがあったが、一子さんに相談したときにパッと言ってくれた一言で「なるほど! 自分もそこを目指したい!」と目覚め、扉がひとつ開いた。自分を書く、ということの見本としてずっと大事にしていた一冊。
 
 山下賢二 (夏葉社)
本文中で登場する「ガケ書房」(現在は移転し、「ホホホ座」という店名になっている)の山下さんの本。山下さんの、上品で柔らかい、けれど奥底がクレイジーな感じは、この本の冒頭2篇を読んでもらうだけで十分に伝わると思う。本文中で書いた初めての出会いの日から現在に至るまで親しくさせていただいているが、今も本屋としていちばん尊敬している先輩だ。私も敗者であり続けたい、かっこ悪くあり続けたいと思う。
 
 
あなたの投票で大賞が決まります!
 
 

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