単行本 - 日本文学

【今すぐ冒頭ためし読み!】「アメトーーク!」【読書芸人】(12/2放映)で紹介された河出の本はこれ!『おもろい以外いらんねん』『いつか深い穴に落ちるまで』『十二月の十日』『短くて恐ろしいフィルの時代』

 今夜12/2放映テレビ朝日「アメトーーク!」は、実に4年ぶりの「読書芸人」回でした。
本好きにはたまらない祭りでしたね! みなさんも好きな本への同意のうなずきが止まらなかったり、興味がなかった本もプレゼンを聞いているうちに無意識に購入リストに入れてしまったりの1時間だったのではないでしょうか。

 番組ご紹介いただいた河出の本を、試し読みとともにまとめてみました。どれも読み応え抜群の傑作たちです。

Aマッソ加納さんご紹介
「芸人が芸人の話を書くと美化しがち。
そういうのがまったくない。
いちばんすごいのが、漫才一本まるごと書いてある。
それがしかも面白い。」
本作は12/2、第38回織田作之助賞にノミネートされたことが明らかになりました!

単行本 46 ● 176ページ
ISBN:978-4-309-02940-5 ● Cコード:0093
定価1,540円(本体1,400円)

幼馴染の咲太と滝場、高校で転校してきたユウキの仲良し三人組。滝場とユウキはお笑いコンビ<馬場リッチバルコニー>を組み、27歳の今も活動中だが――。

*************冒頭ためしよみ公開!*************

 これはお笑いコンビ〈馬場リッチバルコニー〉が解散するまでの話。
 滝場は梅雨がダメだった。小学校高学年くらいから高二まで毎年の雨の日、きまって学校に遅刻する滝場につきそうのが俺の役目だった。
「ほんまトモヒロにいい友だちおってうれしいわあ」
 朝、滝場を家に迎えにいく度におばちゃんは俺のことをほめてくれた。俺は「いい友だち」だった。
「タッキーおはよう」
「ああ……」
 目やにをごしごし取って、湿気のかたまりから安心な空気を探すように滝場がいう。
 滝場はみんなからタッキーと呼ばれていた。俺が最初にそう呼びはじめたことも、俺の前でだけ滝場がだらしない顔を見せるのも俺はうれしかった。

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ラランド・ニシダさんご紹介

「今年見つけた小説家の中でトップ!」

いつか深い穴に落ちるまで

山野辺太郎 著
単行本 46 ● 160ページ
ISBN:978-4-309-02761-6 ● Cコード:0093
定価1,540円(本体1,400円)

サラリーマン・鈴木、人生を「穴」に賭ける。人類は、地球に穴を貫けるのか?  日本―ブラジル間・直線ルート開発計画が今、始まる。
「なぜ、そんな穴を?」
「だって、近道じゃありませんか」
日本戦後史 × 穴掘り × やるせない会社員
大ボラサラリーマン小説の爆誕!!!

*************冒頭ためしよみ公開!*************

 発案者は、運輸省の若手官僚、山本清晴だった。
 日本とブラジルとを直線で結ぶことはできないか。そう彼は考えた。カウンターテーブルには、飲み干された焼酎のコップと、更に残った数本の竹串。
 発案に至るまで、妙な言葉の連なりが、脳裏をぐるぐるとめぐっていた。

 底のない穴を空けよう。
 肉のかたまりに、串を刺す。
 すると、底のない穴ができる。
 地球にだって、それはできる。
 土のかたまりに、底のない穴。
 できるはずだが、串はどこにある?

 そして突然、新しい事業の種がこぼれ落ちたのだ。地球に突き刺す串がどこにあるのかは、追い追い探ってゆけばよいだろう。困難な道のりが始まるとも思わず、彼は楽観的だった。
 会計を済ませてやきとり屋を出ると、夜空をうっすらと覆った雲を透かして、光の強い星がいくつか、点々と姿を見せていた。沿道には、波形のトタンや黒ずんだ木材をミノムシのように継ぎ合わせてできた窮屈なバラックが建ち並び、闇市をかたちづくっている。一九四五年の敗戦から、まだ幾年と経っていなかった。

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Aマッソ加納さんご紹介

十二月の十日

ジョージ・ソーンダーズ 著 岸本 佐知子 訳
単行本 46変形 ● 296ページ
ISBN:978-4-309-20786-5 ● Cコード:0097
定価2,640円(本体2,400円)

中世テーマパークで働く若者、賞金で奇妙な庭の装飾を買う父親、薬物実験のモルモット……ダメ人間たちの何気ない日常を笑いとSF的想像力で描く最重要アメリカ作家のベストセラー短篇集。

*************冒頭ためしよみ公開!*************

わが騎士道、轟沈せり

 恒例の〈松明ナイト〉の夜だった。

 九時ごろ、小便をしに外に出た。裏の森には、園内の人工の川に水を流してるでかいタンクと、使わなくなった古い甲冑が積んであった。

 ドン・マレーが泡くった様子で走ってきて、おれとすれちがった。ついで誰かが泣くような声が聞こえた。甲冑の山のそばに、〈洗い場〉のマーサがあおむけに倒れていた。農婦ふうのギャザースカートが腰までめくれあがっている。

 マーサ:あの人、あたしのボスなのに。ああ。なんてこと。

 ドン・マレーがマーサのボスなのは知っていた。おれのボスもドン・マレーだったからだ。

 そこではじめて、マーサはそこにいるのがおれだということに気がついた。

 テッド、このこと誰にも言わないで、とマーサは言った。お願い。平気よ、たいしたことじゃないから。ネイトにだけは知られたくない。知ったらあの人、気が狂っちゃう。

 そうしてマーサは涙で目の下を真っ黒にして、駐車場のほうにあたふた去っていった。 

〈第四楼閣〉のふもとでは、調理部が一枚板のテーブルに盛大に料理を並べていた。本物のブタの頭、トリの丸焼き、血のソーセージ。

 そばにドン・マレーが立って、むっつりとコールスローをつついていた。

 そしておれを見ると、今まで見たこともないほどフレンドリーな顔で会釈した。

 まったく女ってやつは。そう彼は言った。

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Aマッソ加納さんご紹介

短くて恐ろしいフィルの時代

ジョージ・ソーンダーズ 著 岸本 佐知子 訳
河出文庫 文庫 ● 160ページ
ISBN:978-4-309-46736-8 ● Cコード:0197
定価891円(本体810円)

脳が地面に転がるたびに熱狂的な演説で民衆を煽る独裁者フィル。国民が6人しかいない小国をめぐる奇想天外かつ爆笑必至の物語。ブッカー賞作家が生みだした大量虐殺にまつわるおとぎ話。

*************冒頭ためしよみ公開!*************

 国が小さい、というのはよくある話だが、〈内ホーナー国〉の小ささときた ら、国民が一度に一人しか入れなくて、残りの六人は〈内ホーナー国〉を取り囲んでいる〈外ホーナー国〉の領土内に小さくなって立ち、自分の国に住む順番を待っていなければならないほどだった。
 外ホーナー人たちは、〈一時滞在ゾーン〉にこそこそ身を寄せあって立っている内ホーナー人たちを見るたびに何となく胸糞がわるくなったが、同時に、ああ外ホーナー人でよかったとしみじみ幸せをかみしめた。見ろよ、内ホーナー人の卑屈でみじめったらしくて厚かましいことといったら。それにひきかえ、あいつらが〈一時滞在ゾーン〉にはみ出してくるのを長年にわたって許しているわれわれ外ホーナー人は、なんて寛大で慈悲ぶかいんだろう。だが、内ホーナー人はそんなことを少しもありがたがってなどいなかった。最初のうちこそ感謝感激したものの、今はただ窮屈に体をくっつけあって立ち、外ホーナー人 たちを憎しみのこもった目でにらみつけるだけだった。たっぷりとした土地が あるおかげで体をくっつけあって立つ必要もなく、それどころか広々とした「外ホーナー・カフェ」の通路に脚をいっぱいに伸ばしてのうのうとコーヒー を飲んだりなんかしている外ホーナー人を見るにつけ、内ホーナー人たちは思うのだった──ちぇっ、なんだよあいつら。あんなに土地があり余ってるんなら、こっちに二、三百平方メートルばかり分けてくれたってよさそうなものじゃないか。

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カズレーザーさん、 Aマッソ加納さん、ティモンディ前田さん、ラランド・ニシダさん、ゾフィー上田さん、まことにありがとうございました!

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