単行本 - 日本文学
【プロローグ公開!】花田菜々子『シングルファーザーの年下彼氏の 子ども2人と格闘しまくって考えた 「家族とは何なのか問題」のこと』【発売前にゲラプレゼント!!】
花田菜々子
2020.02.04
夫に別れを告げ家を飛び出し、宿無し生活。どん底人生まっしぐらのなか、「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまく」り、その体験を綴った実録小説『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がベストセラーになった書店員・菜々子。
転職した本屋で出会った新しい彼氏は小学生男子2人の子持ち。付き合うって何? 血がつながってなくても家族になれる? 「子どもを持つつもりじゃなかった」彼女が格闘しまくる、感動の実録私小説第2弾。#シン家族
シングルファーザーの年下彼氏の 子ども2人と格闘しまくって考えた 「家族とは何なのか問題」のこと
プロローグ
お守りのような人
すごく何年ぶりかに恋愛の相手ではない男の人を家に泊めた。しかもほとんど初対面の人。地方で書店員をしているNだ。東京駅に20時、新幹線からの改札乗換口で待ち合わせる。見つけられるか心配だったけど、細い身体にひらりと羽織った白いシャツが雑踏の中で目立って、すぐにわかった。身軽な人の笑顔だった。地上に出ると夜の街は少し肌寒いくらいで、夏の始まりを感じさせる湿った風が強く吹いていた。
人ときちんと親密になるために会うとき、最初の15分くらいはほんとうに重要な時間だと思う。それでいて、使える小手先のテクニックは何も存在しない。緊張を前面には出したくないけど、不自然な明るさや打ち解けたような演技は持ち込みたくない。強いていうならば、それは体幹と呼吸を意識して歩くことに似ている気がする。どれだけ芯からぶれずにまっすぐに、こわばらずにいられるかに集中して。
Nは、2年ほど前に自分の店で無名の本を革新的なやり方で仕掛けて売ることに成功し、書店業界を大きく賑わせていた。彼のことを知らなかったが、その展開についてのインタビューでの「斬新な企画を思いついてやったのではなく、この本を手にとってもらう最善の方法がこれだと思ったからやっただけ。企画から考えることは今後も一切ない」という発言を読んで、純粋に「こんなすごい書店員さんがいるんだな、自分ももっとがんばらないと」と尊敬の念を抱いていた。NはNで、私が書いた『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』という本を読んでくれて、熱のこもった長い書評を寄せてくれていた。言葉の多くは共感に費やされていた。そしてNは本の売り方や書店での売場の発想法について書いた本を出していたので、今度は私が読んで共感する番だった。本の売り方についての考えも似ていたが、「自由」「枠にとらわれない」「生きづらさを抱えて、それでも生きること」について執拗に書いていて、ここもここも自分に似ている、とひたすら思い続けた読書だった。多分Nもそんなふうにして私の本を読んでくれたんだろう。そんな内的両思いの2人の、ついにやってきたデートの夜。
いち早く全文読みたい方、大募集!!!
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2月20日 締切