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【劇場アニメ犬王公開直前対談】消えた存在をどう描くか ―「犬王」が蘇らせる表現の初期衝動★湯浅政明×古川日出男 - 4ページ目

 これからも驚き続けるために

古川 僕はまあ、基本ひとりで作っているので、さっきの初期衝動の話と通じますけど、どうやったら続けていけるのかというと、やっぱり「驚く」ことなんです。今回の映画には自分には想像がつかない数の人が関わっていると思うし、そのぶん最初の「犬王って人物を書いたらどうなるんだろう?」という発見から、はるかに桁違いの驚きにまで到達できた、それが一番嬉しかったです。

湯浅 僕にとっても作品を作るときに、驚きは一番大事かもしれない。僕はひとりでアニメーションを作ることもあるんですけど、ひとりで作るにしてもやっぱり他の誰かに見せたり、話し合いをしたりしていると「ここは良くないんじゃないの?」とか言われて、そうすると「何ぃ?」と思って、相手を納得させようと盛り上げて考えていくところがあって。だから、ひとりで作るよりも膨らんでいくのを現場として感じるんです。「読む」ということに関しても、作品を作ることになってみんなで読んでいくと、一読者として「面白いな」と思ったことの、さらに奥があることに気づけるんです。

古川 僕も小説を書いていて「これ自分の頭で考えたり作った世界のはずなんだけど」という事柄をあとから極限まで調べていくと、実際に存在していたりするんです。一番びっくりしたのは、『沈黙』という小説で、主人公の女の子が「中野区東中野のこの辺に住んでる」と設定して、この辺で道がこう分かれていて、こういう屋敷があって、とずーっと想像しながら何百枚か書いて、それから現地に行って歩いてみたら本当にそういう家があったんです。

湯浅 すごい(笑)。

古川 だから想像力とか思考力ってそこまで行くんだと思っていて。僕らはフィクションとかファンタジーとか、この世にないものを作っていると思われているんだけど、そこまで想像力を使えば現実に到達する。だからわれわれはとことん考えて想像していけばいいんだな、と。湯浅さんも、考えて想像していたら原作の中に本当にあった、という話をされていたけれど、そこの部分をとことん信じて、われわれはゆっくり一歩ずつ踏み出していけばいいのかなと思います。

(二〇二二・二・一八)

初出=「文藝」2022年夏季号

(構成:上田麻由子、写真:川島小鳥)

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