「文藝」2015年秋号・書評

「悪」と名指すもの/名指されるものたちすらも転倒する、 異形の小説。『悪声』いしいしんじ
【評者】水無田気流
『悪声』いしいしんじ著(文藝春秋)『悪声』いしいしんじ著【評者】水無田気流廃寺のコケに置かれていた「なにか」。赤ん坊のような姿だが、あきらかに人間とは異なる物を見、聴くことができる。いや、聴覚や視覚といった感覚の間の垣根が低く、混在した独自の感性を持っていると言ったほうがいいだろう。とりわけ特異なの
2015.09.30単行本
【評者】水無田気流
『悪声』いしいしんじ著(文藝春秋)『悪声』いしいしんじ著【評者】水無田気流廃寺のコケに置かれていた「なにか」。赤ん坊のような姿だが、あきらかに人間とは異なる物を見、聴くことができる。いや、聴覚や視覚といった感覚の間の垣根が低く、混在した独自の感性を持っていると言ったほうがいいだろう。とりわけ特異なの
2015.09.30【評者】中島京子
『女たち三百人の裏切りの書』古川日出男著『女たち三百人の裏切りの書』古川日出男著【評者】中島京子子どものころ素朴に疑問だったのは、『源氏物語』と『平家物語』がまったく違う話なのはなぜか、だった。『源氏』のなよなよぶりがまったく「源平合戦」と結びつかない。時代が違うとか、一方はフィクションで一方はノン
2015.09.30町田康
町田康「ギケイキ」(第十三回) 巻四(承前) 私は静の乳をいらったり口を吸ったりしただろうか。多分、したと思う。けれどもあまりにも前後不覚に酔っていたため、それ以上のことはできず意識を失った。なので以下に記すことは後で人に聞いたり、本で読んだりして知ったことなのだが、そうして私に中途半端に身体
2015.05.11