文藝

フランスで40万部を超えたウエルベック史上最高に暗く美しい愛の物語

『セロトニン』は、〈黄色いベスト運動〉を予言した物語として話題になった。左右を問わず絶賛をもって迎えられ、初版の在庫がたちまち尽きた。〈黄色いベスト運動〉は、今なお国境を超えて拡大を続けている。 ウエルベックは予言的な作家として知られる。多くの人は虚構と事実の類似の関係をして予言と呼ぶが、しかしなが

女優の夏帆、初書評。役者のような不思議な生き物“某”をめぐる川上弘美2年ぶりの長編

「文藝2019年冬季号」に掲載掲載された書評です。『某』川上弘美 著(幻冬舎) 最近は、小説を読むよりも、実際に起こった出来事を掘り下げていくことに興味がある。それでもすこし心がくたびれたとき、ここではないどこかへ行きたいとき、小説を手にとりたくなる。なかでも、川上弘美さんは特別だ。ユーモラスで優し

朝吹真理子が読む、村田沙耶香の“まじめに狂った“最新自選短編集『生命式』

 わたしたちはみえないものをとりかわして生きている。誰かと向きあって話しているとき、いくばくかの菌を交換している。自家製の味噌やぬか漬けは、かき混ぜているひとの手の常在菌が乳酸菌とむすびついて発酵しているからできあがる。○○さんのぬか漬けおいしい、おいしいです、そう言いながら食べているとき、そのひと

『北野武第一短篇集 純、文学』 北野武さん刊行の言葉、全文公開!

 芸人、映画監督、俳優、画家……これまで様々な分野で活躍されてきたビートたけしさんが、初めて「北野武」名義で執筆された小説作品集『北野武第一短篇集 純、文学』を、10月18日に発売いたします。 『北野武第一短篇集 純、文学』収録作は、小説家としての圧倒的な才能が詰まった5作品となります。 売れない芸

ブーケトス一万、キャンドルサービス十万「これって、つまり、何もないところから金が生まれてるってこと?」【まるごと試し読み】祝!野間文芸新人賞候補記念 古谷田奈月『神前酔狂宴』【第1章】

神社の結婚披露宴会場で働き始めたフリーターの浜野。時給の良さを目当てにバイト先を決めた浜野はある日、結婚式が壮大な“茶番”であることに気づく。「滑稽さが肝の喜劇では、登場人物全員が愚者であるべき」と、働きぶりが一転。そんな中、神社に祀られている神が「もとは人だが、今は神」な、明治日本の実在した軍人で

「タイという土地の裸の姿」 タイ出身の作家が自国のデモや政変を背景に流動する国家の欲望を描く──ウティット・ヘーマムーン 著/福冨渉 訳『プラータナー 憑依のポートレート』書評

  この小説においては、すべてが「流体」である。いや、小説自体が、何色もの絵の具が溶かされた、極彩色の「水」なのだ。 時系列も、空間も、性も、そして主人公である「彼」自身の肉体や精神も。常に流動し、混ざりあっている。 冒頭、カラヴァッジョの「ナルキッソス」さながら、水面に映る自身を見つめて

神と愛と日本を撃つ――お仕事小説であり結婚式小説 古谷田奈月 著『神前酔狂宴』

 途中までずっとファンタジーだと思っていたのだ。その前に読んだ「望むのは」は、ゴリラやアライグマが普通に人と暮らしている世界のお話だったし、「リリース」は男女同権の世界を描いたSF的なお話だったから。 だからきっと、これもきっとそのうち神様が出てきたり、不思議な世界に行ったり、異類婚姻譚的な展開にな

対立も断罪もしない新しい夫婦のありかたとは? 島本理生が読む「作家の夫と書かれる妻」──彩瀬まる著『森があふれる』書評

  不思議だったことがある。 たとえば道に迷ったとき、問題に突き当たったとき、目の前の相手の気持ちが分からないとき、頑ななまでに相談することを避ける男の人が多いのはなぜだろう、と。『森があふれる』の中で、「最後まで弱いままで愛される少年漫画の主人公なんていないんだ」という台詞を読み、あの奇

末期がんで亡くなったラッパーECDの妻が明かす 残された二人の娘と過ごした家族の日々──植本一子 著『台風一過』書評

  タイトルどおり読後感さわやかだ。これを読んで植本一子(いっちゃん)はやはりすごいなと思った。いっちゃんと同じように書き仕事をしつつ音楽をやり、シングルの親として三人娘を育てている私は、実家の近所に越したこともあって、地方ライブのときは預かってもらえる環境がある。広島出身のいっちゃんは、

感情を言語化するまでの距離──ミヤギフトシ 著『ディスタント』書評

 恋愛、友情、家族のような「親密さ」をめぐる話は、なかなか深掘りして話しにくい。友人など近しい相手にならできても、仕事つながりの場だと、避けたり。生活の中のささやかな出来事や、セックスが絡んでくると、内実の説明に言葉が尽くせない場合が多い。論理が及ばないところがある。他方、「彼氏・彼女がいるのかどう

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