いつものようで、いつもではない朝『世界一ありふれた答え』[書評]落合恵子
谷川直子
『世界一ありふれた答え』 河出書房新社谷川直子 著 【評者】落合恵子いつものようで、いつもではない朝 本を読みながらCDをかける。本を読みながらこの本にはどんな曲が合うか、考える。いつもの習慣だ。谷川直子さんの『世界一ありふれた答え』にはどんな曲がしっくりくるだろう。本書の中にも
2016.11.24文藝
谷川直子
『世界一ありふれた答え』 河出書房新社谷川直子 著 【評者】落合恵子いつものようで、いつもではない朝 本を読みながらCDをかける。本を読みながらこの本にはどんな曲が合うか、考える。いつもの習慣だ。谷川直子さんの『世界一ありふれた答え』にはどんな曲がしっくりくるだろう。本書の中にも
2016.11.24鹿島田真希
『少年聖女』 河出書房新社鹿島田真希 著 【評者】倉本さおり言葉の淵に映るもの なにかを「読む」、つまり与えられた言葉を解するとは本来、ひとりきりで昏い淵を覗きこむような行為だ。水面に映るそれはけっきょく、輪郭をあいまいにさせた自分自身の姿にほかならない。「わかった」と思って飛び
2016.11.17陣野俊史
『テロルの伝説 桐山襲烈伝』陣野俊史 著 【評者】野崎歓テクスト絶対主義にあらがって なぜこの人の名が忘れられているのか。そのこと自体のうちに、われわれの時代の深い空虚が示されているのではないか。そんな憤りにも近い思いに突き動かされながら、陣野俊史の筆づかいは決して性急に“再評価
2016.08.17松波太郎
『月刊「小説」』松波太郎 【評者】佐々木敦「文学」VS「小説」 「文藝」前号の目次に「月刊「小説」」という題名を見つけた時の狐につままれたような感覚は今も覚えている。なんですかそれ? 文芸誌内文芸誌ということらしい。で、雑誌名が「小説」だと。読んでみると、確かに雑誌の体裁を取って
2016.08.16李龍徳
『報われない人間は永遠に報われない』李龍徳 【評者】斎藤美奈子恋愛小説への挑戦状 浪人中の若者がキャバクラ嬢に洗脳されて破滅への道を歩む。─文藝賞を受賞した李龍徳のデビュー作『死にたくなったら電話して』は、安部公房『砂の女』の現代版みたいな小説だった。李龍徳の第二作『報われない人
2016.08.15最果タヒ
『少女ABCDEFGHIJKLMN』最果タヒ 【評者】金原瑞人詩と小説の読者を裏切らない小説 好きな詩人や歌人が小説を書いたり、エッセイを出すと、もちろん、好きな詩人や歌人の作品だから読む。どれも決まって面白い。しかし、そのぶん、詩や短歌を作ってほしいと思ってしまう。詩や短歌と小
2016.08.12加藤千恵
『ラジオラジオラジオ!』加藤千恵 【評者】倉本さおり「いま」がほどけていく場所で 深夜、自室のパソコンの画面を前に、両親が寝静まってから啜るカップヌードル。物音は極力たてないよう、けれど座椅子の上であぐらをかいた状態で、行儀の悪さはめいっぱい満喫する─。いま思えば、なんて傲慢で、
2016.08.10柳美里
『ねこのおうち』柳美里 著 【評者】武田砂鉄必要悪は単なる悪である 読み進めるうちに、ふと、「死」を放置した幼少期の数日間を思い出してしまった。スーパーのレジ付近で「特売」だか「格安」だかの文句とともに五〇〇円で売られていたカブト虫を親にせがみ、これは自分が育てるからと意気込んだ
2016.08.05【評者】古川日出男
『ギケイキ 千年の流転』町田康 著 【評者】古川日出男「もし源平戦わば」的に我々はすでに結末を知っている。源義経、という人物を知っていて、その末路を知っている。あらゆる歴史物語は─それこそ大河ドラマなどは─「知っているものを、どう愉しませるか?」との課題を抱える。しかし、ほとんどの“あらゆ
2016.07.26【評者】石井千湖
『港、モンテビデオ』いしいしんじ『港、モンテビデオ』いしいしんじ[評者]石井千湖 ──記憶の海を言葉で航る──いしいしんじは『港、モンテビデオ』の舞台になっている三浦半島の三崎町にいたとき、ヴァージニア・ウルフの『燈台へ』を何度も繰り返し読んだという。本書は三崎と『燈台へ』に描かれたセント
2015.12.22