
尾崎世界観が読む、人生に影を抱えた二人の物語。木村紅美『あなたに安全な人』
尾崎世界観
手洗いうがい、こまめな消毒、定期的な検温、それらによって、近頃はすっかり体調を崩すことが減った。もしも発熱してしまえば周囲にも大きな迷惑がかかるし、風邪はおろか、風邪気味すら許されない。この「気味」というのは、とても大事だ。感染症対策によって真っ先に奪われるのはそんな「気味」の中にある気配で、時に
2021.11.05単行本
尾崎世界観
手洗いうがい、こまめな消毒、定期的な検温、それらによって、近頃はすっかり体調を崩すことが減った。もしも発熱してしまえば周囲にも大きな迷惑がかかるし、風邪はおろか、風邪気味すら許されない。この「気味」というのは、とても大事だ。感染症対策によって真っ先に奪われるのはそんな「気味」の中にある気配で、時に
2021.11.05人間(サピエンス)の運命を決めた1万2000年前の分かれ道!私たちの世界の核心に迫る!何種ものヒトのなかで唯一生き延びたホモ・サピエンス。世界各地に進出し、狩猟採集民から農耕民へとなった彼らを待ち受けていたものとは?――そして、古代メソポタミアからアメリカ合衆国まで、サピエンスが大規模な社会、国家、
2021.11.01高野麻衣(コラムニスト)
幼い頃、モーツァルトになりたかった。小学一年生のクリスマスにもらった伝記漫画で、暖炉の薪を切らし「踊ろう、コンスタンツェ」と妻の手をとるモーツァルトにひと目惚れした。まるでロックスターのようでときめいたし、楽天家の父を重ねていたのかもしれない。モーツァルトが好きなの、とすまし顔の小学生に、クラスメイ
2021.10.29藤井太洋
郷愁を誘う台北の商場しょうじょうを舞台にした『歩道橋の魔術師』、自転車を軸に戦中戦後の台湾を描いた家族史の『自転車泥棒』、そして神話的世界と近未来をつなぎ合わせる思索SFの『複眼人』と、傑作が立て続けに刊行されてきた呉明益の最新刊は短編集『雨の島』だ。 収録作品を駆け足で紹介してみよう。 冒頭を飾
2021.10.28カンザキイオリ
私は、あなたの「爆弾」になる――小説家を目指す春樹。ミュージシャンを夢見る雪。そして、二人を見守る人たち。それぞれの哀しみを背負いながら、高校3年間、寄り添うように生きていく。ところが突如、平穏な日々に悲劇が訪れた。隠蔽、苦悩、決断の果てに待つ衝撃の結末とは?すべての答えは卒業式当日。衝撃と感動の結
2021.10.27王谷晶
怒りという感情をいかにソフィスティケートして表現するか。感情的にならず、説教臭さや青臭さを排し、原始的で野蛮な怒りをどうスマートに、読者にそれと分からないくらい自然に伝えていくか。怒っているという言葉を使わずに静かに、ユーモラスに、ひねりを加えて怒りを表現するのがうまいほど、それは上出来な作品。そ
2021.10.25全国書店・オンライン書店で大好評発売中!オンライン書店での購入はこちら。 2019年~2020年11月にかけて『完全版 ピーナッツ全集 全25巻』を刊行した河出書房新社が、今年また新たに『ピーナッツ』の新企画を刊行いたします。(『完全版 ピーナッツ全集』の紹介ペー
2021.10.25評・高遠弘美(フランス文学者)
あなたは鮨屋で「大間の鮪ですよ」と言われて出された鮨であればいくらか味が薄く鮮度が落ちると感じても、美味しいと自分に言い聞かせ、あまつさえ「やはり鮪は大間に限る」と呟く種類の方だろうか。それとも、旨い鮪(ないし穴子でも鯖でも鰺でも)であれば、産地に拘らず口にしてじっくりその滋味を味わうほうだろうか
2021.10.07今野真二
10年以上にわたって多彩な視点から日本語をめぐる著作を発表しつづけてきた今野真二さん。その日本語学のエッセンスを凝縮した一冊とも言える『日本語の教養100』が刊行されました。これを機に、今野日本語学の「年季の入った読者」と自任する山本貴光さんとの往復書簡が実現。日本語についてのみならず、世界をとらえ
2021.10.05松井みどり
I. 花代の写真に最初に出会ったのは、1996年刊行の写真集『ハナヨメ』と、それを記念するタカ・イシイギャラリーでの展示を通してだった。そのとき、ピンクやブルーに輝くおもちゃや踊りの発表会のような親密なイメージと平明な光で撮られた海外の町の一画が並列され、時折挿入される骸骨のイメージが甘美な夢
2021.10.05