単行本

二十一世紀の新しい『明暗』──絲山秋子『夢も見ずに眠った。』書評

 岡山からはじまって熊谷、大津、遠野、お台場、函館、青梅、秩父、横浜、下北沢とつづき、松江で終わる。十二章からなるこの作品の、主な舞台である。関東地方が中心だが、南は中国地方から北は北海道まで、これほど多彩な場所が次々と描かれる作品は、日本の近代文学史上でもちょっとほかに思いつかない。 しかもその多

死にかけた世界を歩く──リン・ディン『アメリカ死にかけ物語』書評

「まずは飲み屋に行きましょう」。開口一番にリン・ディンは言った。一五〇万人都市・川崎市の玄関口である川崎駅改札前は、平日の昼間にもかかわらずごった返している。彼と親しい仲介者が送ってくれたメールには、「リンはこんな感じの中肉中背のおじさんです」という愛のあるコメントと共にプロフィール写真が添付されて

友達に代わっての生活──ハン・ガン『すべての、白いものたちの』書評/評者=イ・ラン

 この本は、一二八週間前の二〇一六年六月一二日に死んだ私の友達が最後まで読んでいた本だ。主(あるじ)なく部屋に残されたかばんを、友達をずっと記憶しておくためにそのまま持ってきた。その中には、病んだ自分の体調を記録した紙や、半透明の薬の袋などが転がっていた。そしてハン・ガンの小説『すべての、白いものた

歴史に騙されないための、歴史とのつきあい方――私が『歴史という教養』を書いた理由

時事問題から平成史、右翼思想からクラシック音楽まで、幅広い守備範囲を誇る博覧強記の思想史家・片山杜秀さんが、渾身の書き下ろし『歴史という教養』を上梓。なぜいま、改めて歴史とは何かを問う必要があるのか。正解の見えない時代における、ほんとうの教養とは何かーー。この一冊に込めた想いを寄せていただいた。&n

『すべての、白いものたちの』への補足(どうぞ、読み終えてから目を通してください)

『すべての、白いものたちの』への補足(どうぞ、読み終えてから目を通してください) 斎藤真理子 『すべての、白いものたちの』(ハン・ガン)に訳者解説をつけることは野暮の骨頂と思われたので、最初から書かないことに決めていた。しかし本書には異なるバージョンも存在すること、また、独特の章

『文藝別冊 総特集 森見登美彦』発売記念 プレゼントキャンペーン

写真:濱田英明2019年1月11日(金)、森見登美彦さんを一冊まるごと総特集した『文藝別冊 総特集 森見登美彦』が、満を持して発売となりました。森見さんの単行本未収録小説や5万字ロングインタビュー、書下ろし自作解説エッセイ、特別対談など、ファン必携・大充実の一冊です。この発売を記念して、本誌の感想を

人工知能は役立たず階級を生み出すか?--『ホモ・デウス』書評(評者・井上智洋)

人類史を変えた3つのリンゴ 人類の歴史には、3つのリンゴに象徴される劇的な変革があった。一つ目は「アダムのリンゴ」で、これは紀元前一万年頃に始まった「農耕革命」を象徴している。この革命によって、狩猟・採集社会から農耕社会への転換がなされた。アダムとイブが「知恵の木の実=リンゴ」を食べてエデ

本読み河出スタッフが選んだ、2018年の本(他社本もあるよ!)

本年も河出書房新社の本をお読みいただき、誠にありがとうございました。本の会社の人は、やっぱりみんな本が好き。昨年に引き続き、「今年どんな本読んだ?」と聞いてみたら、いろんな本が熱いレビューつきでどっさり届きました。年の瀬に、自社・他社問わず、河出のスタッフが大いに感銘を受けた今年の本をご紹介いたしま

文芸季評 山本貴光「文態百版」:2018年6月〜2018年8月

初出=「文藝」2018年冬季号(第1回/第2回) 1 技術今日の文学は技術を書いていなければ十分ではない。かつてそのような意味のことを述べた作家がいた。なぜ技術かといえば、事実として現在私たちが生きている環境の少なからぬ部分が技術によってできているからだ。居住、食事、移動、通信、労働、娯楽、創作、研

【試し読み】梶裕貴さん初の著書『いつかすべてが君の力になる』マンガ化記念☆第1章まるごと公開

 梶裕貴さん初の著書『いつかすべてが君の力になる』のマンガ化が決定しました。本日11月20日発売の少女マンガ誌「Sho-Comi」(小学館)24号で連載がスタート、来年2月下旬にコミックスが発売されます。 梶さんは同号に「コミカライズを提案してくださったSho-Comi編集部様、すてきなマンガを描い

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